『五つの標的』 山田正紀 光風社文庫

「地下鉄ゲーム」
「真夜中のビリヤード」
「四十キロの死線」
「ひびわれた海」
「熱病」

の五編が収録されたミステリ冒険ノワール短編集。

一個目の「地下鉄ゲーム」が

細野不二彦の『東京探偵団』の「MOBIUS・EXPRESS」を彷彿させる傑作。

細野版は無限の環が更に発散するが、こちらは収束するが、

こちらの電車ジャック犯人は見事に逃げ延びます。

SFじゃないよ。知的興奮する鉄道ミステリである。

メビウス・エクスプレス」に興奮した鉄ちゃんは、

「地下鉄ゲーム」も必読である。

全体の雰囲気はギャビン・ライアル稲見一良 路線の

男たちの危険なゲームものだが、

青春ノワールの風味もあります。
政治家や大企業の悪を呪詛しているのは、山田正紀 ならではだね。

全作長編化可能なネタだが、

スタイリッシュに切り捨てているのもやはり天才山田正紀 である。

五つの標的 (光風社文庫)

五つの標的 (光風社文庫)