『エンデュアランス号漂流記』 アーネスト・シャクルトン 中公文庫BIBLIO

1914年、史上初の南極大陸横断を試みるも、

南極に上陸出来ずに、浮氷に閉じ込められたまま、

22月間南極圏を漂流したエンデュアランス号乗組員のノンフィクション。

隊長のアーネスト・シャクルトンの手記なので、

他の隊員の内面描写もセリフもほとんどなくて、

地の文のみが改行なしで延々と続くパターンが多いので、

読み辛くて、感動のパワーポイントが薄い。
エンデュアランス号が氷で破砕されても、

海の上の氷の上をボートを引きずって歩いて生還しようとする

諦めない心に感動するべきだろうが、

深刻な食糧危機にはならないで、

人肉を食うかという状況にはならなかったのは残念。

乗組員28人全員が見事に生還します。

部下掌握術の本としてヨーロッパではロングセラーになったそうだが、

隊長のアーネスト・シャクルトンはクェーカー教徒で、

「神の加護があったから生還できた」

と言うきち○いなので、

21世紀に生きる人間が参考にするには古すぎます。

死の南極圏から生還したら、

第一次世界大戦が起こっており、

「死の世界から狂気の世界に帰ったのか…」

という視点は皮肉が効いてて良いが、

この時代の南極探検隊は全員軍属なので、

生還した全員がもちろん軍地に出征するという、

命の尊さを学ばない白けるオチを迎える。

死の南極圏でもユーモアを忘れないのが、

さすがイギリス人で、

「南極には女の魔手が届かないのがいいよな」

という素晴しいギャグもあるんだが、

全般的には時代を乗り越えてない古い本である。

この手の本はスラヴォミール・ラウイッツ の

『脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち』 が

もっとも生きるのに参考になる名著であろう。

エンデュアランス号漂流記 (中公文庫BIBLIO)

エンデュアランス号漂流記 (中公文庫BIBLIO)