『カオスコープ』 山田正紀 創元クライム・クラブ

殺人事件を交通事故や労災事故に偽装する奴は多いだろうが、

本書は交通事故を殺人事件に偽装する珍しい犯人が出て来ます。

一人称と三人称が交互に語られる構成だが、

一人称のぼくは記憶喪失で、

自分が犯人であるという嫌疑を晴らしたくて、

探偵することになる。

ぼくが語る世界がディックの世界みたいに変で、

P・K・ディックの世界が好きな人には楽しく読めるであろう。

脳の目的は神経の統合調整であり、

考えること、自意識は脳にとってオマケの機能にしか過ぎないという、

人間原理を否定してる、

素晴しいSFとしても読めます。
語り手の記憶に信用が置けない

アンフェアぎりぎりのミステリだが、

謎の真相が知りたくて一気読み出来るだろう。

同じような状況が何度も語られるが、

全く同じセリフなのに、

会話している人物が入れ替わってしまうという

クロバットな仕掛けもあります。

小説でしか出来ないミステリとして高評価するべきだろう。

作者は某映画にインスパイアされたと言っているが、

ディックの何でしょうかねぇ?

カオスコープ (創元クライム・クラブ)

カオスコープ (創元クライム・クラブ)