『カオスコープ』 山田正紀 創元クライム・クラブ
殺人事件を交通事故や労災事故に偽装する奴は多いだろうが、
本書は交通事故を殺人事件に偽装する珍しい犯人が出て来ます。
一人称と三人称が交互に語られる構成だが、
一人称のぼくは記憶喪失で、
自分が犯人であるという嫌疑を晴らしたくて、
探偵することになる。
ぼくが語る世界がディックの世界みたいに変で、
P・K・ディックの世界が好きな人には楽しく読めるであろう。
脳の目的は神経の統合調整であり、
考えること、自意識は脳にとってオマケの機能にしか過ぎないという、
人間原理を否定してる、
素晴しいSFとしても読めます。
語り手の記憶に信用が置けない
アンフェアぎりぎりのミステリだが、
謎の真相が知りたくて一気読み出来るだろう。
同じような状況が何度も語られるが、
全く同じセリフなのに、
会話している人物が入れ替わってしまうという
アクロバットな仕掛けもあります。
小説でしか出来ないミステリとして高評価するべきだろう。
作者は某映画にインスパイアされたと言っているが、
ディックの何でしょうかねぇ?
- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/07/27
- メディア: 単行本
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