『黎明の星』 ジェイムズ・P・ホーガン 内田昌之訳 創元SF文庫
「揺籃の星」 に続くシリーズ第二部だが、
土星の衛星コロニー<クロニア>が舞台になるかと思いきや、
破滅した地球に戻ってしまいます。
原始時代に逆戻りした地球で、
貨幣経済システムを持たないクロニア理想社会を築こうとするが、
前作で救出した地球人が帝国主義を忘れられず、
クロニア政府に反乱し、
地球政府樹立を宣言し、戦争になるという話。
力で他人を支配するのではなく、
協調で構成された国家こそが成長するというクロニア主義だが、
力の行使が好きな野蛮な地球人が銃を向けてくるので、
戦わないわけにはいかず、
結局力の強い者が支配するという説を補強したに終わる失敗作。
平和主義のクロニアなので、
直接兵器を使用するのではなくて、
兵器でないものを兵器に転用して戦うパターンが多いが、
戦ってしまっては、帝国主義の呪縛から乗り越えてない、
やっぱり机上の理想主義じゃん。
平和な理想主義の物語としては、
「断絶への航海」 や「未来の二つの顔」 という
見事な傑作があったのに、
レベルが落ちた同じネタでは手抜きとしか言えない。
ラストの大逆転の特攻作戦も、
盛り上げ方がヘタクソ過ぎて笑う。
あっさり無人探査機をぶつけるのではなくて、
有人の探査機母艦をぶつけるしかないという破目に追い込み、
主人公が体当たりして死んだと思ったら、
乗れない筈の無人探査機で脱出していたという落ちにするべきであろう。
トンデモ理論は、天文学のヴェリコフスキーに続いて、
進化論のラマルクの要不要論を擁護してますw
厄災から四年後なのに、
光量不足に適応した黒い葉の植物が既に地球に生えているww
人間原理も認めているし、
ロバート・J・ソウヤー の「スタープレックス」 よりも、
ハードSFとして劣る。
第三部では宇宙人というかオーバーロードというか、
我々の宇宙を創った神が登場しそうないやんな雰囲気である。
- 作者: ジェイムズ・P.ホーガン,James P. Hogan,内田昌之
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