『シリウス』 オラフ・ステープルドン 早川文庫

犬の視点から人間を考察した哲学SFの傑作である。

本書のベストセリフ

「牧羊犬の仕事は、

ときによってはひどく退屈だと思うが、

たいていの仕事はそういうものなのだ。

知的な興味をどうするかは、

自分の知恵にたよるほかはない。

本を読む機会はないだろうが、

動物と人間の行為について、

非常に興味ある観察をすることができるはずだ」


知性を持った犬が本を読むのは犬SFとして当たり前だが、

天才犬を作った科学者が、

犬を教育する過程で、

敢えて厳しい環境に叩き込むのが、

犬への本物の愛が感じられて素晴しい。

甘やかされて育った現代日本の若者は、

本書の天才犬「シリウス」よりポンポコピーだよな。

オラフ・ステープルドン の作品は哲学SFでもあるので、

シリウスは精神、魂、宗教、神についても思考するが、

宗教は麻薬だが、

科学教も麻薬であり、

どちらも超越した本物の真理にまで思いを馳せる。

宗教家と科学者の論争を醒めた目で馬鹿にするトンデモナイ天才犬である。

が、犬の体に人間以上の知性を持った彼には、

悲劇的結末しかありえなかった…。

300Pちょいしかないが、ほとんど改行なしで文字が埋まっているし、

真剣に考え出すと、ページを繰る手が止まってしまうので、

リーダビリティは悪い。

読むのに6時間以上かかりましたw

人間に生まれた素晴しさに気付いてないポンポコピーは必読である。

シリウス (ハヤカワ文庫 SF 191)

シリウス (ハヤカワ文庫 SF 191)