『ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者』 ジョージ・G・スピーロ  ハヤカワ文庫NF373

多様体の基本群が単位元に還元されるにもかかわらず

その多様体が球ではないということがありうるだろうか」


と、ポアンカレは問題提起したが、

判り易く言うと、

円は切って伸ばすと線分になります。8の字は円か9の字にしかなりません。

二次元の場合は見ただけで円か否かは判断出来るので証明する必要が無いが、

「三次元以上の全ての次元で円と円以外の違いを調べる方法がある」と言うのがポアンカレ予想
これだけでは何が面白いのかまだピンと来ないだろうので、

更に解説するなら、

球とドーナツの違いを区別する方法が重要なのである。

ドーナツはコーヒーカップに変形出来る。

取っ手部分以外を丸めて、

取っ手を縮小すると、

ドーナツは球に瘤が生えた形になる。

この物体に紐(ループ)を掛ける。

紐を絞ると瘤に引っかかる。

だが完全な球なら引っかからずに、

紐は一点に収束される。

ポアンカレ定理が真なら、

宇宙にロケットを飛ばし紐を張り、

ロケットが帰還した後に紐の両端を手繰り寄せて、

引っかからずに全て手繰り寄せられれば、

宇宙が球形かトーラス形か判断出来るのである。

どうです面白くなってきたでしょう?

最後の万能の天才と言われるポアンカレなので、

数学というより天文学寄りの面白い問題を考え付いたみたいですな。

ポアンカレのデビューは三体問題を無限級数で解こうとしたこと。

無限と聞いちゃ無限嫌いの我らのクロネッカー先生が黙っちゃいませんぜ!

スウェーデンの数学誌にポアンカレの三体問題の証明は掲載される筈だったが、

証明論文の審査委員にクロネッカーの同僚のベルリン大学の数学者を選んでいて、

我らの肝っ玉の小さいクロネッカーは、

ベルリン大学から選ぶなら偉大な俺様だろ、ゴルァ!」

と、その数学誌を叩き潰す機会を虎視眈々と狙っていた(笑)

そしてポアンカレの証明には致命的なミスがあった。

ゲラ刷りした後に気づいた編集部は、

「あのおぞましいクロネッカーにゲラが渡ってませんように」

と恐怖に慄きながら、原稿差し替えに奔走する。

我らのクロちゃんは小物の悪扱いされるのが普通だが、

この本では大物の悪役ぽくて良かったですぅ。

で、ポアンカレ予想を証明するには、

トポロジー(位相幾何学)と解析幾何学が重要なツールだが、

トポロジーと言えばリーマンの功績は無視出来ないが、

この本ではリーマンは通行人A扱いである。

原注ではリーマンに功績があったと書かれているが、

トポロジーという用語を作った数学者の隣の家に住んでいた人物としてしか出てこない。

家はゲッティンゲン大学の官舎であり、

その数学者とリーマンの家はテラスが共用だったのである。

リーマン信者はテラスでその数学者にリーマンがトポロジーを教えたと妄想するべきですな(笑)

で、ポアンカレ予想は、多様体を素多様体に分解する手法でペイルマンが証明したが、

多様体という用語を作ったのはリーマン、

証明にはリーマン計量ももちろん使われています。

この本には書かれてないが、テンソル解析もリーマンが居なければ誕生しなかった。

やはり、一番重要な数学者はリーマン。

フェルマー予想ポアンカレ予想も証明されたが、

リーマン予想はいまだに証明されてない。

数学者のセンスはどんな問題を解こうとするかというセンスが重要。

簡単に解ける問題の重要度は低いと理解出来ますよね。

いまだに未解決のリーマン予想を提起したリーマンがやはり宇宙一の天才数学者ですな。

ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者 (ハヤカワ文庫 NF 373 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者 (ハヤカワ文庫 NF 373 〈数理を愉しむ〉シリーズ)