『コールド・ファイア』 ディーン・R・クーンツ 文春文庫

全能の神が存在するのなら、

この世に不幸が存在するのは許せん!

と神への怒りが滾った傑作。

神が助けないのなら、俺が助ける!

と殺人事件や交通事故で人が死にそうな危機を予知し、

無報酬で救助活動に勤しむ男が主人公。

本書のベストセリフ

「ホリーは、人生の最良のときが前方に横たわっている十三歳の少年が

自殺するという考えに、

激しいショックを受けた。

その年頃の若者には、小さな問題が大きく思えるのだ。

大事な問題が、どうにも解決しようがないように思えるのだ。

ホリーは、ラリー・カコニスの死を深く悲しみ、

行き場のない怒りをおぼえた。

なぜなら、その子には、どんな恐怖も克服できることを、

人生が絶望よりも喜びをあたえてくれるものだということを、

学ぶ時間がなかったからだ」


アヴェンジャーエンジェルものだが、

ミッションマンとしての権力は持たず、

公僕としてではなくて、一個人として戦い続けるのがかっちょええ!

他人の危機を予知すると主人公はそこへ向かうのだが、

現場に着いて、事件が発生する直前にならないと、

救助対象は判らない。

あと、2・3分早く現場に着いていたなら、

もっと多くの人を救えたと泣く主人公。

マスゴミに取材される前に、

ファーストネームだけを感謝する人々に教えて現場から消える主人公だが、

謎の英雄の存在に気づくマスゴミは当然現れる。

全米どころか、外国でも活動している謎の英雄。

正体は知られたくなさそうだが、

何故か偽名はほとんど使わず、

ファースト・ネームといえども本名を語る理由は?

無報酬の救助活動ばかりしていて、

この英雄の収入源は何だ?

細かい謎の提示と解決が抜群のストーリー展開で語られる。

英雄には聖痕が発生することもあった。

天使どころか、まさか、イエス・キリスト

シャイニングな主人公を追跡する記者は、

この世のものではないダークな化け物にも遭遇する。

主人公と化け物の正体は?

SFになるかと思ったが、

ホラーで終わる。

完全にシャイニングかと思うと、そうではなく、

主人公は、女子供の敵には、必要以上に攻撃をかける。

既に死んでいる変態ロリコン男の死体に、

ショットガンをぶち込み続ける。

助けられた者が主人公の形相に恐怖することもしばしばある。

ロリコンは五回人生をやり直しても、更生できるわけがない。

ケダモノと呼んだらケダモノに失礼だ。

ロリコンは殺されて当然と言い切る主人公。

子供を助けることが多いが、

老人を助ける時もある。

全ての動機の謎が解明される箇所は見事。

予知能力なのか神のお告げなのか、

超能力者なのか天使なのかキリストなのか悪魔なのかは曖昧。

そこは読者が好きなように解釈すべきだろう。

他人を助ける能力があるのなら助ける行動を起こせ!

コールド・ファイア〈上〉 (文春文庫)

コールド・ファイア〈上〉 (文春文庫)

コールド・ファイア〈下〉 (文春文庫)

コールド・ファイア〈下〉 (文春文庫)