『デューンへの道・公家ハルコンネン』B・ハーバート&K・J・アンダースン 矢野徹 訳 早川文庫

本書のベストセリフ

「愛は弱くする。それは危険だ。

それは判断力を曇らせるし、

わたしたちの義務から逸らせるからだ。

それは常軌を逸脱させることであり、

恥辱であり、許すことのできない違反行為だ。

わたしたちは愛することができない」

デューン砂の惑星」の30年前、レト・アトレイデ26歳、ダンカン・アイダホ20歳の時のデューン前史である。

ハルコンネンメインで、レトとダンカンは100Pごとに15Pぐらいしか出て来ないが、

例によってレトとダンカンのエピソードが素晴しい。

ダンカンの「マイデューク」という呼びかけは、

太宰治の名セリフ、

「マイチェーホフ、マイチャイルド、マイコメディアン」に匹敵する文学的感動を溢れさせる。

エンタメSFの筈が、文学書というか歴史書みたいな取っ付き悪さで、

読者をドンドン無くしていったデューンシリーズであるが、

父が書いた正史より、息子の書いたこっちの方が、

リーダビリティは向上しているので、ブで見つけたら即買いである。

SFというよりパワーファンタジィとして、

魅力的な主人公側と憎たらしい悪役側が織り成す

歴史ドラマに酔いしれて欲しい。

今回、ダンカンは、卒業までの死亡率3割の兵学校に入学するが、

首席卒業を目指すだけでも凄いのだが、

死ぬ危険がある2位以下の生徒も助けながら、

自分は1位を目指すという知恵の冴えを目指す。

福本伸行に匹敵する面白い訓練(ゲーム)が描写されます。

愛(下品なセクース本能)を否定しているので、

一般受けしないのは仕方ないが、

こんな知的で面白い小説が既に絶版とは信じられない。

日本の読書人は目が曇ったアフォが多くて泣けるよな。

愛する家族を守る為戦う!という話が飽きられないのが不思議である。

デューンへの道 公家(ハウス)ハルコンネン〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

デューンへの道 公家(ハウス)ハルコンネン〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

デューンへの道 公家(ハウス)ハルコンネン〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)

デューンへの道 公家(ハウス)ハルコンネン〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)

デューンへの道 公家(ハウス)ハルコンネン〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

デューンへの道 公家(ハウス)ハルコンネン〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)