『月は無慈悲な夜の女王』 ロバート・A・ハインライン 矢野徹 訳 早川文庫

ハインラインと言うと右翼SFの代表者みたいに扱われるが、

革命戦争をテーマにした左翼SFの傑作が、本書である。

地球の圧制に苦しむ月都市側が主人公である。
資源も人口も乏しい月が地球に勝てるのか?

圧倒的に不利な状況から、自由と尊厳を求めて、

地球に独立戦争を挑む月側に感情移入して、

抜群のストーリーテラーハインラインの筆と、

矢野先生の名訳に酔いしれて下さい。

月側の参謀が、コンピュータ「マイクロフト」なのには、

シャーロキアンはにやりとするだろう。

ほとんど軍事力を持たない月が、

ラストに凄い新兵器を投入するシーンは素晴らしいカタルシスだが、

あれを兵器に転用出来ると考え付いたのは、

「マイクロフト」である。

ホーガンの「未来の二つの顔」のプロローグで、

コンピュータが業務上過失致死事件を発生させてしまうが、

あれって、「月は無慈悲な夜の女王」のラストを想起してしまうよね。

反戦左翼SFが多いホーガンだが、

好戦右翼SF作家ハインラインへオマージュする心を持っていたと解釈しては穿ち過ぎか?w

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)