『月は無慈悲な夜の女王』 ロバート・A・ハインライン 矢野徹 訳 早川文庫
ハインラインと言うと右翼SFの代表者みたいに扱われるが、
革命戦争をテーマにした左翼SFの傑作が、本書である。
地球の圧制に苦しむ月都市側が主人公である。
資源も人口も乏しい月が地球に勝てるのか?
圧倒的に不利な状況から、自由と尊厳を求めて、
地球に独立戦争を挑む月側に感情移入して、
矢野先生の名訳に酔いしれて下さい。
月側の参謀が、コンピュータ「マイクロフト」なのには、
シャーロキアンはにやりとするだろう。
ほとんど軍事力を持たない月が、
ラストに凄い新兵器を投入するシーンは素晴らしいカタルシスだが、
あれを兵器に転用出来ると考え付いたのは、
「マイクロフト」である。
ホーガンの「未来の二つの顔」のプロローグで、
コンピュータが業務上過失致死事件を発生させてしまうが、
あれって、「月は無慈悲な夜の女王」のラストを想起してしまうよね。
反戦左翼SFが多いホーガンだが、
好戦右翼SF作家ハインラインへオマージュする心を持っていたと解釈しては穿ち過ぎか?w
- 作者: ロバート・A.ハインライン,牧眞司,Robert A. Heinlein,矢野徹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/03/15
- メディア: 文庫
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