『闇の左手』 アーシュラ・K・ル・グィン 小尾芙佐訳 早川文庫
ブームが来たのか来なかったのかよく判らん ル・グィンだが、
SF界の女王の最高傑作は、「闇の左手」だと思う。
雌雄同体の宇宙人が住む惑星「冬」を舞台にした静謐な物語。
少女漫画界の女王萩尾望都は、ル・グィンの影響を受けている事が、
本書を読めば理解出来るであろう。
もーさまの漫画では雌雄同体の宇宙人は美形だが、
本書は冴えない中年男が女に性転換する。
誰もが平等に男にも女にもなれる素晴らしい世界を描いた、
ジェンダーSFの最高傑作である。
ジェンダーテーマというと、男みたいなウーマンリブ闘士が騒ぎ立てる、
野蛮で下品な作品もあるが、
本書はヒステリックに男女同権を叫んでないので、おっさんでも楽しめます。
性差の問題は読み手が考えるものとして、
一歩引いた冷静な視点で物語が語られている。
女に性転換するのが当たり前の社会なので、
主人公が女になるシーンは唐突な印象を受けるかもしれない。
生物学SFとして雌雄同体の知的生命の必然性も語られている。
俺は男だ!とブイブイ叫んで一生を終えれる世界って、
単純なお気楽な世界だよな。
- 作者: アーシュラ・K・ル・グィン,Ursula K. Le Guin,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/09/01
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 388回
- この商品を含むブログ (103件) を見る