『闇の左手』 アーシュラ・K・ル・グィン 小尾芙佐訳 早川文庫

ゲド戦記」がジブリでアニメ化され、

ブームが来たのか来なかったのかよく判らん ル・グィンだが、

SF界の女王の最高傑作は、「闇の左手」だと思う。

雌雄同体の宇宙人が住む惑星「冬」を舞台にした静謐な物語。

少女漫画界の女王萩尾望都は、ル・グィンの影響を受けている事が、

本書を読めば理解出来るであろう。
もーさまの漫画では雌雄同体の宇宙人は美形だが、

本書は冴えない中年男が女に性転換する。

誰もが平等に男にも女にもなれる素晴らしい世界を描いた、

ジェンダーSFの最高傑作である。

ジェンダーテーマというと、男みたいなウーマンリブ闘士が騒ぎ立てる、

野蛮で下品な作品もあるが、

本書はヒステリックに男女同権を叫んでないので、おっさんでも楽しめます。

性差の問題は読み手が考えるものとして、

一歩引いた冷静な視点で物語が語られている。

女に性転換するのが当たり前の社会なので、

主人公が女になるシーンは唐突な印象を受けるかもしれない。

生物学SFとして雌雄同体の知的生命の必然性も語られている。

俺は男だ!とブイブイ叫んで一生を終えれる世界って、

単純なお気楽な世界だよな。