『永遠のチャンピオン エレコーゼ1』 マイクル・ムアコック 井辻朱美 訳 ハヤカワ

本書はヒロイック・ファンタジーの形を借りた純粋SF
(あー古臭い言い方やね!)です。
人類とは何者か?どこから来て、どこへ行くのか?
地球の文明を、宇宙の秩序を、継ぐのは誰か?という話です。
リン・カーターがエンターティンメントにしては暗すぎると言った哲学SFでもある。
SFの本でイギリスSFオールタイムベスト10に挙げた人がいるくらいの傑作である。
この作品を読まずしてヒロイック・ファンタジーなんてただ面白いだけの活劇さ
と嘯く奴はタコである。
ただし、出来る限りムアコックの他の作品を先に読んでおくこと。
永遠の戦士エレコーゼは輪廻転生し、他の作品の主人公も演じてきたのである。
「この人を見よ」(ニーチェしか知らん奴はタコである)の
カール・グロガヴァーでさえあったのだ。
エレコーゼが、ホークムーンでもエルリックでもコルムでもケインでもなくて、
エレコーゼとして戦う二度目の戦いの為に復活するところから物語りは始まる。
昔、あるいはこれからの地球で人類対亜人類の戦争に加担する為に!
エレコーゼは前世の記憶を持っているので、性格が暗いのですよ。
また戦わねばならんのか、俺は永遠に戦う運命なのか!
20世紀のイギリスで平凡な小市民として生きていた時代もあったのに!
本書はムアコック以外のあらゆるファンタジーを含め
死亡する生命体がもっとも多い作品であろう。
だが戦争賛美SFではない。
本書を読んだ後でも、
敵が攻めてきたら俺は日本人だから日本を守る為に戦うぞ!
と言う奴に、
いくら愛国心の馬鹿馬鹿しさを説いたところで無駄である。
勝手に政治家と資本家の為に死になさい。