『造物主の選択』 ジェイムズ・P・ホーガン 創元
これはホーガンの弟ではなくてホーガン本人が書いたと思われる。
最新のロボット工学と人工生命理論(と言っても15年以上は前か?)に基づいているので、
ハードSFとしては及第点の作品である。
「断絶への航海」での恒星移民アイデアを膨らませた形で
百万年前に全滅したと思われていた宇宙人が敵として復活する。
もっとも勝れた生命形態について深く考えさせられるそれなりの傑作である。
進化論を生命システムに組み込まなかった
キリスト教の造物主が如何に頭の悪い馬鹿かは本書を読めば理解出来るであろう。
しかし、一時期、すべての科学雑誌を読んでいた私にとっては、ここで語られる理論は古すぎる。
サイエンスか岩波の科学か科学朝日かニュートンかオムニかウータンか、
何で読んだか思い出せんが、
生命体の外見がフラクタル構造体に変形出来るものがベストなのは当たり前である。
いまだに生命体のベストが人間型だと思っている古いタイプのSFファンには凄い衝撃を与えるだろうが・・・。
進化論は網羅しているみたいだが、人工生命論におけるトップダウンとボトムアップの解説が甘い。
囚人のジレンマ問題もはっきりと語られていない。
宇宙人のスーパーコンピュータを味方にするトリックももっと突っ込んで
ホーガンにしては珍しく、
凶悪な宇宙人(他者の利益を奪うがもっとも楽しいと感じるサドの詐欺師タイプ)が
登場するのもそれなりに面白いのであるが・・・。
ただし、本作の対宇宙人コンピュータ作戦は、SFの本質をついた素晴らしい理念に基づいている。
どんなに優れたハードウェアとソフトウェアを持った存在であろうとも、
我々と同じ宇宙に存在するのなら、
物理法則は同じである。
科学知識に差があり、地球人が発見していない物理法則を知っている凄い宇宙人といえども、
地球人が強いと思わせて出し抜く方法はある。
それは超能力である。
我々の宇宙の物理法則では、
超能力とか魔法とか幽霊~~~~~(m--)mとか神とかは存在出来ない。
地球人に超能力があると信じさせることが出来れば、
宇宙人は地球人に恐れおののく。という発想は素晴らしい。
このインチキ超能力のトリックをもっと煮詰めて欲しかった。
- 作者: ジェイムズ・P ホーガン,James P. Hogan,小隅黎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/01/29
- メディア: 文庫
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