『サム・ホーソーンの事件簿Ⅴ』 エドワード・D・ホック 木村二郎 訳 創元推理文庫

「消えたロードハウスの謎」

「田舎道に立つ郵便受けの謎」

「混み合った墓地の謎」

「巨大ミミズクの謎」

「奇蹟を起こす水瓶の謎」

「幽霊が出るテラスの謎」

「知られざる扉の謎」

「有蓋橋の第二の謎」

「案山子会議の謎」

「動物病院の謎」

「園芸道具置場の謎」

「黄色い壁紙の謎」

「レオポルド警部の密室」


四巻のベスト3は全て他のアンソロジーに被っていて、

このシリーズは全訳する必要はないのでは?と思った事は撤回します。

見事に持ち直しました。この五巻のレベルは高い。
ベスト3は、

「園芸道具置場の謎」

「田舎道に立つ郵便受けの謎」

「有蓋橋の第二の謎」

かな?

ホックは謎の提示編は巧いが、

解決編が苦しい話が多いが、

「園芸道具置場の謎」は、

誰が?何故?どうやって?の三つの謎を、

たった一言で説明する見事な切れ味のアンソニー賞受賞作。

初代看護婦(探偵助手)が帰還するというおまけもイイ!

時代は遂にWWⅡに突入し、

若い三代目看護婦は、従軍看護婦へと志願して消えるのだ。

初代看護婦は夫が徴兵され、

息子のサム君を連れて、サム先生の元に帰ってくる。

サム先生より年上の人妻なので、

恋愛ネタにならず落ち着いて読める名コンビの復活である。

時代ミステリでもある本書だが、

今巻はナチスのシンパがゾロゾロ出て来ていい。

偽善者の作家ならナチスは無条件に悪役の犯人にするが、

優れたエンタメ系のホックはもちろんイデオロギーは押し付けない。

犯人役にも被害者役にもナチスシンパが振り分けられます。

六巻は日本参戦だよな?

登場人物が日本人をどう悪く言うか、デラ楽しみ!

ちなみに今巻ではドイツ人をボロクソに言うキャラもいます。

ヒトラー萌えのキャラも出てくるがw

誰のファンだろうと関係ない。

そいつが殺人犯ならば、サム先生は指摘するのみ!

正義の名の元に人を殺す権利はあってはならないのだ。

ベスト3に入れなかったが、

猫殺し事件を捜査する「動物病院の謎」もいい。

相棒の保安官が協力しないのもいい。

猫殺しの犯人捕まえたって、100ドルの罰金刑で終わりである。

そんなつまらない事件に権力を持つ保安官が協力してはダメポ。

猫を殺したいのなら野良猫を殺せばいいのに、

侵入不可能な密室の中で猫を殺した犯人の意図は何か?

殺人事件にはならないが、猫殺し事件が別の重大な事件に発展するのは、

猫の価値を正しく解釈した名作である。

他人より自分の飼い猫の方が価値があると思ってるポンポコピーは反省汁!

サム・ホーソーンの事件簿〈5〉 (創元推理文庫)

サム・ホーソーンの事件簿〈5〉 (創元推理文庫)