『サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ』 エドワード・D・ホック  木村二郎訳 創元文庫

古き良き禁酒法時代のアメリカの田舎町を舞台したこのシリーズも、

三巻に入り1930年代後半になり、遂に禁酒法は撤回される。

時代は、破廉恥な酔っ払いが徘徊する危ない時代に突入し始める。
犯人が性的倒錯者というパターンが目立つようになってきた。

一番面白かったのは、例によって他社のアンソロジーに収録されている、

「消えた空中ブランコ乗りの謎」である。

サーカスの空中ブランコ乗りがテントの中の空中で消え、

別の家の中で死体で発見される話だが、

サム先生自身がサーカス見物しているので、

主人公の目撃体験に誤謬があったという、アンフェアギリギリの傑作。

主人公の探偵は、自分の眼を信じるなら、

人間が空中で消えてテレポートしたという事実を受け入れるしかなくなる。

しかし、テレポートなど科学的にありえない。

何故、自分の眼は誤魔化されたのか?

と推理する主人公の思考過程に燃えます。

幽霊や超能力は存在しないのが明白なので、

体験したら、そのトリックを考えるのが知的な人間というものである。

我等のサム先生に乾杯!(飲むなよw)