『闇の公子』 タニス・リー 浅羽莢子 訳 ハヤカワ

魔夜峰央の魔界の侯爵アスタロトものに似ている(ってこっちが元祖か?藁)

最初のHシーンはもちろん「やめて!お尻が!痛い!」であり、

やおい少女たちにリーが受けるのも、むべなるかなである。

闇の公子で妖魔の王アルスラーンじゃない、アズュラーンが、

きまぐれに人間を助けたり、いちびったりするオムニバスものである。

文体は絢爛豪華で格調高くて、リーの魅力爆発であるが、

面白い物語を期待するのは間違いである。
ムードに酔いたい人向け。

人間をおもちゃとしか思っていない妖魔の戯れの物語だから、

アズュラーンに目をつけられたほとんどの人間は不幸な死に方をする。

人間にも魔法を使える者はいるが、アズュラーンの魔力には及ばないし、

智恵で魔法に対抗しようとするものもいるが、

ほとんどは、アズュラーンの企みの前に挫折する。

いつもいつも、アズュラーンの思惑通りに物語が進んでは興ざめするので、

アズュラーンが感動して手を出せなくなる人間が、

ラストの方で0.5人+0.5人出てくるが、

ほとんどのエピソードの展開は甘すぎる。

ラストで、人類滅亡の危機になり

(発端はもちろんアズュラーンのいたずらが原因)、

アズュラーンは、おもちゃがいなくなっては楽しくないと、

神々に人類を救うように直訴するのだが、

神々は人類は失敗作だと認識していて、とっくの昔に見捨てているので、動かない。

アズュラーンは人類を救うために、その敵と相討ちになって、灰になって消える。

ここで、終われば感動的だが、もちろん、アズュラーンは復活するのだ(藁

宝石オタクや花オタクが読むと面白いかもしれない。

漢字や文体に酔いたい人向けのファンタジーである。

しかし、地球が平らだった遥か過去のファンタジー世界と謂えども、

何十万年もテックレベルの進歩がないのは、釈然としない。

科学が発達していったら、SFになってしまうから、

ファンタジーに付ける文句としては、間違っているか?

まあ、ファンタジーも広義のSFではあるが、

わいはやっぱり、ハードSFが好きやねん。

闇の公子 (ハヤカワ文庫FT)

闇の公子 (ハヤカワ文庫FT)