『ベトナム観光公社』 筒井康隆

SFは価値の相対化をはかる文学。

自己矛盾さえ無ければどんな突飛な表現でも許される文学という建前があった。

が、日本SF界にはやはりタブーがあったのだ。

本書はベカンコーと蔑称され、

「いくらSFでも書いてはいけないことがあるのではないか?」

と唾棄された問題作である。
ベトナム戦争を観光として見に行った日本人団体が

戦争に巻き込まれて殺される話である。

殺されるシーンがギャグ調で大笑い出来ます。

筒井先生のギャグはへたなギャグ漫画より大爆笑出来るが、

ギャグとは先鋭化するものである。

戦争を笑いものにするとは何事かという論調があるが、

戦争の悲惨さのみをしかめっ面して語っても、

悲惨はかっちょええ悲壮美に繋がる可能性がある。

戦争さえおちょくってギャグにしてしまう筒井先生は、

本物の反戦主義者だと思う。

ベトナム観光公社 (中公文庫)

ベトナム観光公社 (中公文庫)