『中国の教科書の中の日本と日本人』 関根謙 一光社

越田稜編集の「アジアの教科書に書かれた日本の戦争」と被るネタがあるが、
中国は統一教科書なので、被っている中国の中学生の歴史教科書ネタは、
全く同じ本を元にしている筈であるが、数字が違う箇所があるのは、
翻訳の違いでは説明出来ませんね(藁。
同じテキストを訳しても、
30万人以上>30万人に達した
数十万人>十数万人
になるのは不思議ですねぇ。
越田の訳の方がやはり、日本の悪を強調してました。
詳しくは下の方で述べる。

小学校5年語文(国語)教科書より「狼牙山の五人の壮士」

侵略者日本軍から人民を逃がす時間を稼ぐ為、
狼牙山に立て篭もって、武器弾薬が無くなっても、
投石して戦って全滅した5人の英雄の物語。
5人で日本の鬼を何人退治したか、具体的な数字も欲しかった。
国語教科書だから小説ということになるが、
5人の英雄のキャラ立ちが弱くて、感情移入出来ない失敗作。
もっと上手に作って欲しい。
って玉砕した狼牙山の5人の英雄は、作り事ではなくて、
もちろん本当にあったことですが(藁

小学校6年語文(国語)教科書より「小さな英雄・雨来」

これは文学的に抒情表現もされていて、少しは進歩している。
鬼の日本人兵士に拷問されても、中国人民兵士の居場所を吐かずに、
知恵を回らし自力で脱出して生還する12歳の少年の物語。
鬼の日本軍が侵略してくる前の、村でののどかな生活の描写に、
脱出方法の伏線が張られていて、それなりに工夫しているが、
説明の理論付けは良いが、解決編の提示が弱くて、
推理小説として読むと失敗作である。
もっと幾らでも感動的に描写出来ます。
雨来の生還をはっきりとセリフで言うのではなくて、
雨来の特技を描写している前半の描写を繰り返すに留めて、
生還は明示せずに読者に考えさせる余韻を持たす終わり方の方が、小説としては粋でかっこよい傑作になったのに惜しい。

小学校6年語文(国語)教科書より「河北の地下道戦」

中国人民は地下道を利用してゲリラ戦を仕掛け、
間抜けな日本軍を翻弄しましたという出来損ないの小説。
っていうか、説明だけで描写がほとんどなく小説になってない失敗作。
ヴァカな日本軍兵士の滑稽な描写を入れるべきであろう。

高校1年語文(国語)教科書より「包身工」

中国版「ああ野麦峠」であるが、
悲惨なヒロインの内面描写が少ないので、
鬼の日本企業やいじめっ子役の日本人社長令嬢の熱演も空回りに感じる。
もっとも女工哀史を語ろうにも、ヒロインの喉は潰されているので、自分の不幸を語ることは不可能ですが(藁
芦柴棒(ルーチャイバン)=薪木と綽名される、
日本企業の労奴として売られたきた15歳の痩せこけた中国人少女の物語。
3年間で2/3の少女は過労死するという、
奴隷的生活を描いたものだが、
三人称で淡々と書いたのは失敗だね。
ルーチャイバンの一人称で、故郷の村に日本企業の人買いが来るところから始めるべきだろう。
おしん」の橋田先生に書かせれば、中国人民12億人が涙する大傑作になるネタなのに、
本当に惜しい(藁
ヒロインが死んだのかどうか明示されてないのは、効果が薄いと思う。
風邪で寝込んで起き上がれないと、水をぶっかけられる職場だが、
水責め火責めしても、ルーチャイバンは、その日は起きてきませんでした。
というエンディングの方が受けるよな。
しかし、悪の日本企業として三井を堂々と出していいの?(藁

高校1年語文(国語)教科書より「桜賛歌」

1961年に日本に来た中国人作家泳心の
日本人労働者賛歌のエッセイ。
悪意も皮肉もありません。
純粋に、素晴らしい日本人との心温まる交流を描いた作品。
労働運動(資本家への戦い)よりも、人民同士の交流を讃美している信じられない作品。
労働者として自分が不利になろうとも、資本家との戦いを放棄して、
中国人の友人に便宜を尽くす感動的な日本人の物語。
悪と戦うよりも、善を救うのを優先せよと主張する素晴らしい物語。
中国はWWⅡ時代の日本軍の悪は糾弾しますが、
現代日本の人民には罪はないと認識しているのだ。
中日友好が大前提なのである。

小学校歴史教科書より「中日黄海大戦」

日清戦争ネタである。
日本海軍の卑怯な奇襲が皮肉たっぷりで面白い。
しかし、大和や三笠ならともかく、
松島や吉野のファンなんて日本でもいないだろうし、
マニアックすぎてあまり突っ込む気になれん。

小学校歴史教科書より「西安事変」

パス。

小学校歴史教科書より「盧溝橋事変」

パス2。

小学校歴史教科書より「日本の明治維新

明治維新階級闘争の革命史観を当てはめようと苦労している文は笑える。

中学歴史教科書より「唐と日本の交流」

唐の文化を猿真似した日本の後進国さがよく判ってナイスである。

中学歴史教科書より「明王朝の対外関係」

倭寇と戦った英雄戚継光の正義の軍隊がかっちょええ!

中学歴史教科書より「朝鮮支援戦争」

世界征服を企む悪の豊臣秀吉朝鮮侵略を阻止する為、
世界平和の為に出撃する明の軍隊に萌え〜。

中学歴史教科書より「封建社会の繁栄−隋唐」

ややや、中国の教科書ではなくて、この本自体の目次がおかしいことに気付いた。
封建社会の繁栄−隋唐」を目次で指定されたページで開くと
「唐と日本の交流」のページになります。(藁
章立ての正しい洗い出しをして、
正しい目次も作ることが出来ないとは、
小学生以下だよな。
目次が間違っている本には生まれて初めて出くわして、激しく萎え。

で、上のほうで振った越田稜の訳との違いの話だが、
二人の訳と原語を列挙するに留める。
強奪>掠奪=扼掠
このうえない大きな罪を犯した>最も恥ずべき罪を犯した=犯下了韜天罪行
素手の>平和に暮らしていた=和平居民
そのむごたらしさはみるに忍びがたいものであった>その惨状は目を覆うばかりであった=惨不忍目者
18日の夜、日本軍はまた幕府山に監禁された市民と、武器を放棄した兵士五万七○○○人を下関草鞋峡に追いつめ>18日夜も日本軍は幕府山に拘留していた住民とすでに武装解除された兵士五万七千人以上を下関草鞋峡に駆りたて=18日夜、日軍又将囚干幕府山的居民和己放下武器的士兵五万七千多人駆至下関草鞋峡
京城内は、屍と人骨が散乱し、瓦礫が山のようになって、凄惨な血腥い風が吹き渡り、まさにこの世の地獄と化した。この日本軍の凶悪残虐極まりない行為は、中国人民の激しい憤怒を呼び起こした。>ほとんど一緒なので省略=南京城里屍骨臥横、瓦礫成山、腥風凄凄、成為人間地獄。日軍的凶悪残暴、激起了中国人民的尤比憤怒。

では、声高々に叫べ!
「ハンカリョウトウテンザイコウ」
「ワヘイキョミンザンフニンモク」
「ニチグンショウシュウキョミンワコ」
「ホウカブキシヘイクシカンキョウ」
「ナンキンジョウリシコツガオウ」
「ガレキセイザンセイフウセイセイ」
「セイイニンゲンジゴク」
「ニチグンキョウアクザンボウ」
「ゲッキリョウチュウゴクジンミンコウヒフンヌ」
なんかかっちょええ詩が出来たと思う。(藁

中国の教科書の中の日本と日本人

中国の教科書の中の日本と日本人