『ニーチェ』 ジル・ドゥルーズ 湯浅博雄訳 ちくま学芸文庫

ニーチェ (ちくま学芸文庫)

ニーチェ (ちくま学芸文庫)

これ一冊あれば、ニーチェ自身の著作は必要ないお値打ちな本。

ニーチェの書いた重要な文とドゥルーズの解説と伝記で構成されている。

人類は様々な宗教や神の概念を考えたが、

キリスト教のヤーウェとイエスが、もっとも品性卑しい悪であることが、この本読めば理解出来ます。

キリスト教は人間の生きる力を奪う、人類を堕落させるふざけた教えである。

人類の敵の神は殺されて当然なのである。

神が死んでも、神の代わりに高位の人間が社会を支配するシステムにニーチェは警鐘を鳴らしている。

支配者というのは被支配者のエネルギーを奪わないと生きていけない哀れな弱い存在だ

という考え方は面白かった。

力のベクトルは創造的に進むのが理想である。

全ての人が超人になって、他人に生きる力を与える生き方をするべきなのである。

ニーチェと言えばルサンチマンについての考察も有名であるが、

怨恨とか復讐が虚しい生き方なのは、

復讐の対象者に自分と同じ苦痛を与えてそいつの生産性を奪おうという

負のエネルギーの発露だからである。

それでも怨恨を持つものが、復讐したがるのは、

何もしないと自分の苦悩の無意味さが顕著になるので、

「俺は悪くない、復讐ではない、正義の鉄槌だ!」

などと正の力の発現だと思い込みたいからである。

復讐は無意味であるが、ニーチェと言えばニヒリズムもあったな。

人生は無意味ではありません。

ニーチェ虚無主義を乗り越えて超人になれと言っているのである。

他の重要なキーワードはアイデンティテイ(自己同一性)の問題があったな。

「私は何者か?」「意識を持つ人間とは何か?」と悩むのがいかにも哲学ぽいが、

ニーチェは自我について悩む人を馬鹿にしているのでかっちょええ!

「自分探し」することの無意味さを判りやすく喩えている。

「私は何者であるか?」という悩みは、

「現在とはいつのことだろう?」と悩むのと同じようなものである。

現在について考えた瞬間に、既に現在は過去になっているのですよ。

ようは、アイデンティテイも固定された存在ではなくて、

過去から未来へと変化していくのに、

過去の自分を定義しても、それは既に今の自分とは同一ではないのだ。

未来の自分がどうすれば良い存在になれるかと考え、

創造的に行動すればいいのだ。

肯定する力を発動し、創造的に生きないといけないのである。

何も創造しないで、無意味な分析をする哲学者をニーチェは馬鹿にしています。

哲学者はクリエイターであるべきだと言っています。

もっともクリエイターとしてのニーチェは、

おかしな詩人みたいなものですが(藁

晩年に精神病院にぶちこまれたニーチェの言葉に全て感動するのは無理だろうが、

哲学というより文学に近いから、ニーチェは読みやすくて面白いよ。