『わたしはロボット』 アイザック・アシモフ  伊藤 哲訳 創元文庫

序章 (Instroduction)

1 ロビイ (Robbie)

2 堂々めぐり (Runaround)

3 われ思う、ゆえに…… (Reason)

4 野うさぎを追って (Catch That Rabbit)

5 うそつき (Liar!)

6 迷子のロボット (Little Lost Robot)

7 逃避 (Escape!)

8 証拠 (Evidence)

9 災厄のとき (The Evitable Conflict)


何十年とアシモフとクラークはどちらが優れたSF作家か?と悩んでいましたが、

最近やっと結論が出ました。

それはアシモフである。

クラークがアシモフに劣る点として、

合作者、共作者のせいもあるが、

つまんねえ人間ドラマに色気を出した駄作がけっこうあるということがあげられる。

アシモフは最後まで、性欲がどうたらというくだらない人間ドラマは書かなかった。

ハードな科学的思考による論理の面白さがアシモフの魅力である。

本書はロボット工学三原則というネタの宝庫を明確にした

アシモフの代表作、基本中の基本の短編集である。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
(A robot may not harm a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.)

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
(A robot must obey the orders given to it by the human beings, except where such orders would conflict with the First Law.)

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
(A robot must protect its own existence, as long as such protection does not conflict the First or Second Law.)

で、三原則をどう破るかが、というか破られたと思わせて守られていたと証明するのが、

アシモフの論理の面白さである。

SFというより、推理小説、パズル的な面白さがアシモフの持ち味だが、

くだらねえ人間ドラマよりは科学的で面白く、一流のSFと言っていいだろう。

本書のベストはやっぱ、「嘘つき」でしょうな。

三原則を守った結果、とんでもない嘘つきロボットが出現してしまうという傑作。

次は、三原則の矛盾に追い込まれ、

論理の袋小路が行動として現れ、

進むことも、戻ることも出来なくなって、

オブジェクトの周りを同じ距離を保ったまま、

永遠に回り続ける破目になるロボットの話「堂々めぐり」でしょうな。

純粋たる知的遊戯、知性の巨人がアシモフである。

もうひとつクラークより優れている点を上げると、

アシモフ作品にはふざけた宇宙人は出て来ない。

地球人以外に知的生命体はいないのが科学の常識である。

宇宙生物が出てくるのは少しあるが、

それはあくまでも、化学ハードSFとして、

メタン呼吸系生物とか珪素構成系生物とかを考察しているに過ぎない。

ネタとして思考実験を楽しんでいるのがアシモフの作品からは読み取れるが、

クラークは、宇宙人が通信してくると信じていたキ○ガイであるw