『利腕』 ディック・フランシス 早川ミステリ文庫

利腕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12‐18))

利腕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12‐18))

冒険小説史上初めて、敵が大自然でも敵国でも敵スパイでも悪の組織でもなくて、

自分の弱い心だとした事により絶賛されるべき作品。

しかし、心の葛藤の問題はエンタメというより文学の面白さのような?

真面目に苦悩する主人公が私にはうっとおしく感じた。

本格推理として一応ドンデン返しもあるので現在でも並以上の作品だと思うが、

男の自尊心、男は泣いて他人に助けを求めてはいけないと言う視点のジェンダー観が古いよね。

主人公は株取引や先物取引で収入があるので、

探偵業は趣味みたいに思えるのもいただけない。

9時から5時までのデスクワークより危険な調査業を自分で選択したんだから、

悪党の脅迫に負けて自尊心が傷つけられるのも自業自得。

プロとして探偵しか出来ないのなら、

プロの誇りを傷つけられた痛みは重いと思うが、

主人公の悪党退治は趣味でしょ?

ギャビン・ライアルのようにストイックなプロが主人公と紹介される事もあるが、

これも探偵仕事の過程で知り合った女とセ○○スしてるし、

ライアルより設定が甘いと思う。