『理性の限界―不可能性・不確定性・不完全性』 高橋昌一郎 講談社現代新書

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

不確定性原理不完全性定理は有名だが、

マイナーなアローの不可能性定理の話題が新鮮で面白かったです。

完全に公平な民主的な投票システムは作れないという話。

アローは胡散臭い社会科学者だが、

数学的に具体的に数字の例を当てはめて説明しているので

とても判り易い。

どんな投票システムにするかで、

結果を左右出来るということです。

短めの例を提示します。

日本一の都市を投票で選ぶ場合、

東京と大阪と名古屋で投票するとします。

投票者は各都市一名。

自分の住む都市に投票すると思われるので、

一次のみの単記投票ではそれぞれに一票ずつで決着が付かない。

名古屋に住むズル賢いゴルさん(仮名)はこう提案します。

「まず東京と大阪のどちらがいいか投票して、その勝者と名古屋と決戦投票しましょう!」

東京が勝つ場合(ゴルさんが東京に投票)は

負けた大阪代表は名古屋に投票して名古屋が日本一。

大阪が勝つ場合(ゴルさんが大阪に投票)は

負けた東京代表は名古屋に投票して名古屋が日本一。

ということです。

五つの投票対象まで具体的に一位を操作出来る例が述べられています。

どんな複次投票システムでも、複記投票システムでも、

システムに欠点があって有利な戦略というか、

全ての候補者に有利な票の数え方が存在するのです。

というわけで、投票方法をまず投票して決定しなくては不公平ではないか?

という悪循環も生まれますw

教え子にセクハラと言われないキスの仕方も載っているが、

悪用する教師絶対いそうできょわいw

高橋先生の悪ふざけのギャグが暴走し過ぎている気もするが、

神の非存在証明も語られているし、

知的遊戯としてはとても楽しい一冊である。