『雷の季節の終わりに』 恒川光太郎

雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)

雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)

本書のベストセリフ

「性には興味がない。

生殖能力と性欲をセットで失ったのだ。

失ってしまえば、ただそれは、

公平な判断を狂わす不必要な劣情としか思えなくなった」


「20億の針」「寄生獣」「うしおととら」を想起させる傑作。

出来の良いクーンツの雰囲気もある。

不死の敵を如何に封印するか?ネタはタニス・リーにも匹敵する。

これも加えたら誉めすぎだが、

デビルマン」に通じるイメージもあります。

時制のトリックが見事に炸裂するミステリホラーの傑作、

人称のトリックはやや不完全だが、

「夜市」同様捻ったプロットの意外性に溢れる傑作。

文学の香りも漂う美しい文だが、

難しい漢字や難解な比喩表現は一切使ってないのも素晴しい。

美しいホラーなんだが、エンタメとして

謎の要素が多いミステリとしても傑作。

美しい文が書けるのなら純文学に擦り寄る事も考えるだろうが、

ブンガクとしてのふざけたテクニックは一切使ってない

物語の王道を行く素晴しい小説。

日本一のホラー作家は恒川光太郎でケテーイである。