『秋の牢獄』 恒川光太郎
- 作者: 恒川光太郎
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/09/25
- メディア: 文庫
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「ただ己のためだけに人を惑わして生きる。
そんな命が必要なのか?
十年待ったが、
目の前にいるのは今現在の自分のことしか頭にない、
容量の小さなただのくだらんガキで、
結局、
世の中にはもう何の光も残っていないということなんだな」
3作収録された短編集だが、
全てが長編化可能なネタで、
アイデアの出し惜しみをしないのは、
恒川光太郎 の好感度がまたまた上昇!
ケン・グリムウッド の「リプレイ」 を短編でやってしまう潔さ!
あっと言う間にリプレイヤーが集結してしまいます。
一生ではなくて同じ一日の繰り返しだが、
描写すべきリプレイは全て描写されます。
同じ一日の繰り返しだから、
まったく同じ文を繰り返しても問題はないのだが、
読者を不愉快にさせる目的で書かれたブンガクではなくて、
エンタメなので、恒川光太郎 はそんな姑息な字数稼ぎはしてません。
無駄な描写がない珠玉の短編集である。
『夜市』 に比べるとプロットは単純だが、
短編なので仕方ないよな。
「リプレイ」 話以外の短編も、
誰かが既に書いているようなネタだが、
恒川光太郎の志しの高さは読み取れるので
私は充分堪能しました。
2本目は諸星大二郎 、
3本目は高橋葉介にも書けそうな話だが、
小説として無駄が無い美しい文はほんと素晴しいです。
捨てろタイプな男女の愛や、
自分の幸福しか考えない小物のゲージュツ家を揶揄してる視点は素晴しい!
3本目は普通の作家なら美大生の恋愛物語の側面を強調するよな。
個性も能力も無くて他人を嫉妬するだけの美大生の描写はいい!
ゲージュツ表現に苦悩する繊細な若者と思わせて、
恒川光太郎 は素晴しい!
自分の欲望を満たすことしか考えてない小物の
ブンガク者やゲージュツ家は、社会の迷惑なので、
消えて下さい。