『秋の牢獄』 恒川光太郎

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

本書のベストセリフ

「ただ己のためだけに人を惑わして生きる。

そんな命が必要なのか?

十年待ったが、

目の前にいるのは今現在の自分のことしか頭にない、

容量の小さなただのくだらんガキで、

結局、

世の中にはもう何の光も残っていないということなんだな」


3作収録された短編集だが、

全てが長編化可能なネタで、

イデアの出し惜しみをしないのは、

恒川光太郎山田正紀 に匹敵する高密度の作家だな。

恒川光太郎 の好感度がまたまた上昇!

ケン・グリムウッド の「リプレイ」 を短編でやってしまう潔さ!

あっと言う間にリプレイヤーが集結してしまいます。

一生ではなくて同じ一日の繰り返しだが、

描写すべきリプレイは全て描写されます。

同じ一日の繰り返しだから、

まったく同じ文を繰り返しても問題はないのだが、

読者を不愉快にさせる目的で書かれたブンガクではなくて、

エンタメなので、恒川光太郎 はそんな姑息な字数稼ぎはしてません。

無駄な描写がない珠玉の短編集である。

『夜市』 に比べるとプロットは単純だが、

短編なので仕方ないよな。

「リプレイ」 話以外の短編も、

誰かが既に書いているようなネタだが、

恒川光太郎の志しの高さは読み取れるので

私は充分堪能しました。

2本目は諸星大二郎

3本目は高橋葉介にも書けそうな話だが、

小説として無駄が無い美しい文はほんと素晴しいです。

捨てろタイプな男女の愛や、

自分の幸福しか考えない小物のゲージュツ家を揶揄してる視点は素晴しい!

3本目は普通の作家なら美大生の恋愛物語の側面を強調するよな。

個性も能力も無くて他人を嫉妬するだけの美大生の描写はいい!

ゲージュツ表現に苦悩する繊細な若者と思わせて、

実はセクロスにしか興味が無い小物の美大生を描いた

恒川光太郎 は素晴しい!

自分の欲望を満たすことしか考えてない小物の

ブンガク者やゲージュツ家は、社会の迷惑なので、

消えて下さい。