『死の泉』 皆川博子 早川文庫JA

死の泉 (ハヤカワ文庫JA)

死の泉 (ハヤカワ文庫JA)

ギュンター・フォン・フュルステンベルグのDer Spiralig Burgruineを

野上晶が訳したという構成のナチスドイツもの。

耽美と聞いていたが、美少年同士の801はない。

タニス・リーにも栗本薫にも江森備にも劣る。

悪役がナチの科学者だが、

人体実験もおとなしい。

ヒロインが途中で発狂して、

物語の途中にヒロインが見ている狂気の世界が、

唐突に挿入されるのもうっとおしい。

リフレインの手法も手抜きに感じる。

メタフィクションとして大ドンデン返しもあるが、

ミステリとしては伏線の張り方がヘタで、

ああ、そうだったんですか。

という感じでサプライズはない。

ドイツファン以外にはお勧め出来ない。

わざと翻訳調の硬い文章で書いたのだろうが、

文章も巧いとは思えない。

耽美小説として萌える要素は少ない。

ドイツの文化の教養小説として、

ドイツ人になりきって書こうとしたが、

面白い小説としては失敗作だよな。

日本人がドイツ人になって小説書くというアイデアはいいが、

イデア倒れでしたな。