『ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環』 D・R・ホフスタッター  野崎昭弘 柳瀬尚紀 はやしはじめ訳

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

数学ネタの「フィネガンズ・ウェイク」。

だから、訳者に柳瀬尚紀がいるw

数学用語も駄洒落で二重表記する、

壮大な数学ギャグの世界だが、

真面目な演習問題が延々と続くページは、

文系にはキツイかもしれない。

章と章の間にゼノンのアキレスと亀との漫才が挟まっているので、

漫才部分は、ルイス・キャロルの小説のように楽に読めるが、

真剣に考えて、練習問題を解きながら読むと

時間かかって仕方がないので、

斜め読みで軽く理解出来るところだけを飛ばし読みして構わないと思う。

ゲーデル不完全性定理

音楽プレイヤーに例えるというナイスな説明もあるが、

私が一番感動したのは、超自然数の話である。

ユークリッド幾何学以外に、

存在しない時空の幾何学

ヒルベルト幾何学、運動量幾何学位相幾何学などがあるが、

我々の自然ではない別次元の自然に、

自然数というのを仮定出来るのだ。

我々の自然数で表記すると、

(3、-5、7)などのように3つのインデックスの組み合わせ表記するしかない

自然数が存在するのだ。

自然数に対するクォークみたいな数字、

それが超自然数である。

そんなもんが何の役に立つかと言うと、

無限の極限の極少や極大を計算する時に役立つらしい。

一番小さい超自然数も、我々の自然の中にあるとするのなら、

アレフ0の彼方に位置づけられるらしいw

自然数がある世界にはもちろん、

無理数、超虚数アレフ1にあるらしい。

アレフ2の超越数は、超超越数と表記される事になるので、

語呂が悪いので存在しないかもしれないw

というか、この本が書かれた時点では、

アレフ2は発見されてなかった感じ。

あと、アラン・チューリングの天才性は、

ゲーデルにほとんど匹敵することがうかがわれて、

チューリングファンは必読の書。

チューリングもほとんど不完全性定理に到達してたと思われ。

ホフスタッターは自意識ある人工知能が作れるという立場だが、

公式には絶対存在出来ないと諦観してるのが面白い。

心の再現に機械が成功したとしても、

「再現出来た心は人間の心の重要な本質ではない」

と因縁付けて、機械の心を認めない勢力が必ず跋扈すると予測してます。

ホフスタッター自身は機械が心を持った時点で、

機械と呼んではダメポと言ってます。

心の考察で、認知科学の色々な話題も語られるが、

パターン認識の話題は無くてもよかったと思う。

鳥でもピカソの絵とモネの絵は見分けられるのだから、

人間知性の本質は画像解析能力ではないと思う。

やはり文字、言語能力が本質だと思う。

情報を読み取る能力というより、

人工的な情報があると認識する能力、

フレーム認識が鍵だと私は思う。

鳥はピカソとモネが区別出来ても、

絵という概念は持ってないということです。

『虚栄の都市―東京を襲った悪夢の48時間』 山田正紀

押井守がこれ読んで、とても敵わないと、

小説家に成るのを諦めたという伝説があるが、

正紀作品としては佳作の範疇。

テロリストが東京を襲うという反日主義者の夢を具現した小説だが、

テロリストが勝ってしまう小説は思想信条の自由が無い日本では発表不可能の為か、

中途半端に終わってる。

テロリストとの戦いは、『謀殺のチェスゲーム』の雰囲気が少しあるが、

これよりは『謀殺のチェスゲーム』の方がまとまっていて良いでしょう。

テロに巻き込まれて登場人物がドンドン悲惨な目に逢うが、

一人だけがテロの結果として幸福な未来を手に入れるのはさすが!

蛇足だが、押井守はこの小説を参考にして、

機動警察パトレイバーの映画を作ったらしい。

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