『方法への挑戦―科学的創造と知のアナーキズム』 ポール・K・ファイヤアーベント 新曜社

究極の哲学「なんでもかまわない」が目差すのは、
否定不可能とされる絶対的真理「科学」、「科学的合理性」への 挑戦!
方法論、認識論、実在論、哲学の全てを駆使して、
著者は「科学」の権威の引き摺り下ろしに挑む!
「科学者」も「宗教家」も「売春婦」も同等の価値にしようと企む、
著者の渾身の哲学ゲームに戦慄せよ!

著者本人はエッセイだと申しておりますので文学カテゴリで良いよな。
そもそも哲学というカテゴリは私のブログにはありません。
哲学は学問とは認めないので全て文学扱い(笑)

知的刺激には満ちているが、あくまでもゲームである。
論理学まで否定するのは、やりすぎたよな。
非論理な思考で他人を説得出来るわけがない。
著者が筋が通ってる本を書ける時点で、
論理や合理や科学的思考に頼ってることは明確。

共約不可能性の説明で、言語的論理認識を視覚的錯覚知覚に
摩り替えて説明してるように感じたのは私だけ?

ギャグエッセイなのであんまり真面目に理解しようとする必要はないが、
判りやすいギャグが少ない(下ネタは目に付くが)ので、
真面目な哲学書として誤読されるおそれもあるな。

「人はビルの窓から飛び降りずにエレベータで降りるのは何故か?」
という哲学的命題は著者オリジナルのギャグでしたっけ?

「私は何者か?」
「神は存在するのか?」
「針の上で何人の天使が踊れるのか?」
等の歴史に残った哲学ギャグに比べるといまいちですな。

エッセイとして美術ネタ文学ネタも出てくるが、
錯覚の例としてベラスケスの絵を出す著者のセンスの良さには共感した。
だだくさにテキトーに塗りたくったにしか見えない荒い面の塊が、
離れて見ると髪の毛一本一本まで精密に書いた、
写真のように精密な絵に見えるベラスケスの
絵の不思議に気付くきっかけとして本書は有効。

本書は先鋭化しすぎているので、
真面目に科学史や科学の方法論を学びたい人は、

『科学的発見の論理』 カール・ライムント・ポパー
『方法の擁護―科学的研究プログラムの方法論』 イムレ・ラカトシュ

の方が参考になるかもしれません。

方法への挑戦―科学的創造と知のアナーキズム

方法への挑戦―科学的創造と知のアナーキズム