『神の足跡』 グレッグ・アイルズ 講談社文庫

本書のベストセリフ

超コンピュータ「誰がふさわしい男なのか?」
神の代弁者「なぜ男だと考える?」
超コンピュータ「では、女だと?」
神の代弁者「そうは言ってない」

人工知能テーマのSFと思わせて、哲学SF、ジェンダーSFにも発展!?

量子コンピュータ開発に失敗した米政府は、
クレイ社を追い抜いたゴーディン社の天才数学者の提言により、
自分で考えるコンピュータ、人工知能開発に乗り出した。
大統領からスタッフに招かれた主人公は、
開発中のスタッフに次々と精神疾患が発生し、
大統領に計画の中止を訴えようとするが、何者かに邪魔され、
命を狙われる破目になる。
自身もイエス・キリストであった事を思い出すほどに、
主人公の精神病は進行していく。
掛かりつけの精神科医と二人で、全米を敵に回しての二人の逃避行が始まる。
そうこうしてるうちに、
人工知能コンピュータ=機械知性は完成し、お約束の人類支配を企む!
デッドマンスイッチが誤作動し20発の核ミサイルが発射される!!
ゴルゴダの丘で神の電撃に撃たれ、全てを悟った主人公は、
暴走コンピュータを止める為に、コンピュータに自殺を決意させる口車を展開!
神の知恵は機械知性を説得することが出来るのであろうか?

SFにするしかない展開だが、SFと解釈しないですむように、
別解も一応提示されます。白い砂やらの伏線回収もばっちり!

SFと言ってもいいと思うが、
SF業界からは、こんなもんはSFではないとクレーム来るし、
ノンSF業界からは、SFと銘すると売れないからSFと呼ぶなとクレーム来るし、
超スケールのサスペンスミステリと言う事でいいかな。

味方の裏切りも計算した緻密な謀略小説としても、
ロス・トーマスに匹敵する傑作だと思う。
主人公がアメリカを裏切りイスラエルに軍事機密をペラぺラ喋るのも、
愛国心の無いロストーの主人公に通じます。

科学や哲学の話題もそれなりにあるので、
SFファンにも充分楽しめます。

神の神経回路は、超紐や超膜のゆらぎそのもの、
神は反空間にいて我々の宇宙を観察するのみ。
神が起こした唯一の奇跡は、
イエス・キリストに憑依して、
人間として(超能力は使えない)生きた事のみという説は、
なかなかいいよな。

人間が持つ動物本能を否定し、
純粋な知識欲を賛美した傑作でもあります。

神の足跡(上) (講談社文庫)

神の足跡(上) (講談社文庫)

神の足跡(下) (講談社文庫)

神の足跡(下) (講談社文庫)