『ミステリ・オペラ』 山田正紀 早川文庫JA

戦場で死者が甦る!

ホラーとしか思えない不思議な事件を語るのは、

平行世界を移動する超能力者!?

SFホラーにするしかないと思われるが、

見事に本格ミステリとして結末付けます。

この長さだと無駄な描写や薀蓄があるものだが、

無駄は無く、全てが計算されつくした見事な本格ミステリ

ミステリの全てのガジェットが登場する、

ミステリ版「ハイペリオン」 。

童謡見立て殺人等の幼稚な推理小説が、

人類史に存在しなければならない理由を訴える

究極のミステリである。
知的ゲームとして殺人事件を扱うミステリ小説の倫理観が嫌いな人、

真実の重みの方が虚構の小説より素晴しいと思っている人、

ミステリ小説を馬鹿にしているそういう人こそ本書は読むべきである。

もちろんミステリマニアに受ける固有名詞もいっぱい出て来ます。

エラリー・クイーン 、ジョン・ディクスン・カーヴァン・ダイン

江戸川乱歩横溝正史小栗虫太郎夢野久作松本清張等の名が出て来ます。

ビルから落ちた人間が30分後に地上に激突するというのは、

エドワード・D・ホック の「長い墜落」だが、

エドワード・D・ホック の名は出て来ないw

貨車を丸ごと消すというのもエドワード・D・ホック にあったが、

なんでエドワード・D・ホック が出ないと言うと、

エドワード・D・ホックエラリー・クイーン の一人でもあったので、

ダイイングメッセージでエラリー・クイーン を指すネタもあるので、

エラリー・クイーン が三人も四人もいてはややこしいし、

そこまでのミステリの知識は余分な薀蓄として切り捨てたのでしょうな。

ダイイングメッセージでエラリー・クイーン とは、

エラリー・クイーン が犯人なのかと思う人もいるかもしれないが、

全員が犯人でも探偵でも被害者でも語り手でもある

究極のミステリなのであーる!

「崑崙遊撃隊」や「化石の城」では泣かせる愛と友情のドラマが失敗しているが、

本書は恋愛小説として読んでも泣けますよ。

惜しむらくはいつものことだが、タイトルが悪い。

森博嗣 の『すべてがFになる』 が大ヒットしたのだから、

「13が16になる」と改題した方がもっと売れるのではないか?

南京大虐殺殺人事件」という題もいいよな。

本書は小説ファン、歴史という真実ファン、

全ての本読みの必読本である。

ミステリ・オペラ (上) (ハヤカワ文庫 JA (811))

ミステリ・オペラ (上) (ハヤカワ文庫 JA (811))

ミステリ・オペラ (下) (ハヤカワ文庫 JA (812))

ミステリ・オペラ (下) (ハヤカワ文庫 JA (812))