『沈黙の王』 宮城谷昌光 文春文庫

「沈黙の王」 22代目商王子昭
「地中の火」 6代目夏王寒浞
「妖異記」 周幽王時代史官伯陽&鄭王友
「豊饒の門」 周平王時代掘突(友の子)
鳳凰の冠」 春秋時代晋の貴族羊舌氏の叔向

の5編が収められた短編集だがどれもが傑作。

超能力者や変身人間が出てくる話もあるので、

中華ファンタシーの好きな人にも楽しめるだろう。
美女は人を惑わす妖かしの存在であるという

作者の女性観が素晴しい。

笑わん姫褒似や夏姫の娘はキャラとして登場しますが、

その他の傾国の美女全ての話題も語られますよ。

晋の平公の大傅の叔向は夏姫の娘を妻にするが、

夏姫の息子が法を犯したら、

夏姫の娘が「お兄ちゃんを助けて!」

と哀願しても処刑してしまうのがかっちょよかったです。

美女を妻にしても正義を貫いた叔向に萌え燃えです。

叔向がメジャーに成れなかったのは、

同時代に「晏子」 も「子産」 も生きていたからです。

晏子」 と「子産」 に比べると叔向は小物過ぎるが、

大長編の主人公には成れなくても、

短編としてなら充分主人公が務まる人材ですな。

宮城谷昌光 の大長編にいきなり挑戦したくない人の、

入門用の短編集として本書はベストであろう。

沈黙の王 (文春文庫)

沈黙の王 (文春文庫)