『思想のドラマトゥルギー』 林達夫+久野収 平凡社ライブラリー

本書のベストセリフ

林達夫ボッシュに非常に期待していたけれども、

    画としてはがっかりしたな。

    深みから言えば、後のブリューゲルのほうがずっとあるな。

    しかし、話はまた逸れるが、

    プラド美術館では、何といってもゴヤです。

    そのすごさにかなうものはない。

    一筋縄にはいかない。

    何としても彼を釈く暗号表が作れない。

   批評家泣かせの大画家です。

    目玉商品の二つの『マハ』なんか

    大変人を食ったミスティフィケーション、

    全くのいたずら書きとしか僕には思えなくなってくる。

    みんなあの前で溜息をついているが、

    ゴヤの厖大な画業の中の

    たった一度のキレイ事の画であることの裏の意味を考えると、

    身震いが出るほど恐ろしい不敵な画かきです。

    いい気な俗流評論家の御託並べを拝聴していると、

    二重にこっちは愚弄されることになる」

綺麗な女の裸体画なんて芸術ではない、

いたずら書きだと判断すべしと主張する

林達夫美術評論家としても一流であった!

二流に見えたのは、二流のイタリアやフランスの美術をメインに論じていたからである。

ゴヤを全部見てゴヤが世界一の画家だと理解出来ない奴は、

チラシの裏に書いたWXYの落書きに感動してなさい。

ダヴィンチコードという暗号表が作れて謎解き出来るレオナルドより、

暗号表が作れないゴヤという文は素晴しい分析ですよな。

もういっちょ行くぜ!


小林勇「大事なことを林さん一つ忘れている。人はいつか幕を下ろさなくちゃならない」

林達夫「俺はいまだに幕を揚げた覚えはないぞ」


人生は有限だから、プロとして精力的に物を書けと出版社に言われて、

本を出版してるのにプロの物書きになった覚えはないと言う

林達夫はすげえかっちょええよな。

本にならなくても、

金にならなくても、

林達夫は学問をするのが好きだったのである。

名誉欲も金銭欲も持たなかった純粋な知識欲の巨人が林達夫である。

原稿依頼があると、常に枚数を半分にしてくれと言う伝説もあったそうです。

駄文をダラダラと書いて金を稼ごうと企む小物は、

林達夫の文を精練する技術に感服しろ!

書かない事で語る反語的精神の物書きはもういないよな。

短い文に高度な情報を詰め込むのが天才である。

この本は久野収との対談集で、

様々な話題が語られるが、

話題になった人名が巻末に人名索引として五百名以上載っているが、

オルテガがあるのに、サクレドがないというミスがある。

黒い三連星オルテガに比べたら、

ランバラル隊のサクレドはマイナー過ぎるが、

語られているのだからちゃんと索引にも載せて欲しかった。

索引を作った春山清純のミスだな。

ガノタだったらサクレドを忘れるわけがないのに、

学校で習うことしか知らない偏差値馬鹿は恥ずかしいよなw

ごめんなさい、私もこの本読んでサクレドの元ネタに気付いた口です。

いやあ〜富野監督の教養は凄いですよねww

思想のドラマトゥルギー (平凡社ライブラリー)

思想のドラマトゥルギー (平凡社ライブラリー)