『スタープレックス』 ロバート・J・ソウヤー  内田昌之訳  ハヤカワ

タイトルがバクスターっぽい(ってフラックスに似ているだけか?)から、

面白いかもと思って買った。

期待以上の傑作であった。

タイムスケールは百億年で空間スケールは六十億光年の

バクスター並にスケールのでかいSFである。

最近のホーガンよりはハードSFとしても仮想論理の展開が凄くて素晴らしい。
本書は人類とイルカと豚型宇宙人とゲシュタルト型宇宙人の科学者が千人乗り込んだ、

宇宙船スタープレックス号が、暗黒物質と銀河の生命誕生の謎を解くお話である。

7個目と8個目のクォークをでっち上げた科学論理が素晴らしい!

量子力学シュレディンガーの猫問題から、

矮小な人間原理を導き出したつまんない科学者もいたせいか、

価値の相対化をはかるべきSFにおいても、

人間万歳の古臭いテーマも最近みられるが、

本書における人間を含めた全ての知的生命体が生まれた理由が、

どえりゃあSFしてる。

宇宙に知的生命体が発生したのは、単なる偶然である。

結果として生命体が発生してしまったが、

宇宙に生命体が発生する条件は、生命体の為ではないのだ!

この本当の目的が空前絶後の新ネタである。

生命体は宇宙という大海に浮かぶ単なる泥カスのようなものである。

宇宙の歴史においては、生命体の歴史はあまりにも短すぎる。

観測者なんていなくても宇宙は存在して来たのに、

くだらん人間が宇宙に必要だという人間原理は大笑いである。

生命体は宇宙のオマケだが、生命として発生してしまった以上は、

絶望してしまってはいけない。

無意味な存在である生命体にも、

宇宙に対して素晴らしいことを出来ると気付くラストは

SF史上もっともスケールの大きなハッピーエンドである。

僕って何?とか、自分探しの好きな女性にぜひ読んで欲しい。

ハイフリック限界を持つたった百年程度の生命体が悩むなんて爆笑もんだよ。

本書を読めば人間生活の悩みはすべて吹き飛びます。

スタープレックス (ハヤカワ文庫SF)

スタープレックス (ハヤカワ文庫SF)