『タイムストーム』 G・R・ディクスン 講談

本書のベストセリフ

「自分の人生について最初の大発見に到達した。

それはだれも本当には人を愛さない、ということだった。

人間は若い時には、母親を必要だと思う一つの本能が先天的に備わっている。

そして又、その母親には別の本能が与えられていて、

子供に注意を払わなければならないと考えている。

しかし、子供は大きくなるにつれて、親はただの人間的な利己心を持った他人に過ぎず、

人生の快楽を追求する上で、自分の競争者だと覚る。

そして、親の方も、子供というものは、結局、それほどユニークでも素晴らしいものでもなく、

ただの小さな野蛮人に過ぎず、自分等の重荷に過ぎないと覚る。

ついにこういうことがわかった時、ぼくは、これを知ることは、

他のすべての人に勝る一つの大きな利点を得ることだと知った。

なぜなら、ぼくが極く小さな頃母がいっていたように、

人生は愛ではなく、競争−−−闘争だと、その時覚ったのだから。

そして、これを覚ることによって、今や、ぼくは解放され、

本当に大切なものにすべての注意を集中することができるようになったのだ」


この手の屈折した根暗男が主人公の話は私は大好きである。

しかもドンドンスケールがでかくなるSF冒険物語だからたまりませんわ。
主人公が20ン才の時、タイムストームの時の壁が出現し、世界の秩序は崩壊した。

不可視の壁の向こうはいつの時代とスリ変わっているのか?

それは壁を越えないと判らない。

時の嵐によって、

あらゆる組み合わせのタイムスリップが続発する地球に生き延びることができる生命が存在するのか?

無政府状態の地球を統一しながら主人公はタイムストームの謎に挑戦する。

主人公の仲間がどんどん増えていくのが楽しいの。

すんなり仲間になる奴もいれば、戦う時もあるし、理解しあえず離散する奴もいる。

それでも主人公の王国は成長し、未来人も宇宙人も主人公の味方となり、

地球だけにとどまらず、超宇宙も含めたすべての生命体を救う為に、

主人公はもちろん宇宙へも飛び出す。

宇宙を破壊しようとしていたのは神でも幻魔でもない。

宇宙の法則が少し狂っただけさ。

自分の命を犠牲にして宇宙に希望を甦らせるような古臭いワイドスクリーンバロックじゃないさ。

超宇宙にまで突入しても、主人公は地球に帰還するのだ。

死んでしまえばすべては終りさ。

タイムストーム(上) (講談社文庫)

タイムストーム(上) (講談社文庫)

タイムストーム(下) (講談社文庫)

タイムストーム(下) (講談社文庫)