『不思議な猫たち』 ダン&ドゾワ編 深町真理子他訳 扶桑社文庫

「魔法の猫」で人気大爆発したダン&ドゾワコンビの猫小説アンソロジー第二弾である。
「魔法の猫」のレビューがないのは、私は猫派ではなくて犬派なので、
本自体を探したことすらないからです(藁
なら、何故これを買ったかと言うとアシモフ作品が収録されているからだ。
SFファンであるならば、アシモフとクラークとホーガンとバクスター
全部読むのが常識なのだ。いや、マジで。
猫小説というと、猫を貴婦人のように擬人化する作品が思い浮かぶが、
その通りの作品も入っていて笑ってしまう。
「猫の創造性」フリッツ・ライバー
出来損ないの猫小説の群れのなかで、この作品だけが、見事にSFしている。
猫の価値観が貴婦人やら高貴なる自由人やらと全く同じ猫小説は、 擬人化しなくても、
人間でもいいじゃん!と白けるが、 フリッツ・ライバーの作品だけが、
猫の思考と行動でセンス・オブ・ワンダーしているのだ。
猫を人間に置き換えて書き直したとしても、
J・G・バラードの 「コーラルDの雲の彫刻士」より遥かに勝れたSFである。
猫小説はもちろん猫を褒め称えるものであるが、
それのみに終始している他の猫小説に比べると、ライバーの筆は段違いに冴えている。
芸術性溢れる哲学猫を描写しているが、それは猫にとってであり、
人間も猫の芸術性に気付くが、所詮浅ましい畜生であると落とすので、
猫嫌いにも満足出来る猫小説の最高傑作である。
智恵ある人間から見れば、所詮馬鹿な猫であるが、
猫は自分の馬鹿さに気付いていないので、
猫自身は自分を天才の高貴な存在と認識しているという、
どこからも文句の出ない傑作である。
猫というと、大島弓子に「綿の国星」という、
猫の絵のみを擬人化して描いた漫画があるが、あれはライバーを盗作したのだなと思った。

「焔の虎」 タニス・リー
超人ロックの「炎の虎」の原典ではなく、 宗教がかった、畏怖すべき神秘生物ネタ。
テーマは糞だが、キャラクターや文体はファンタジーミステリーとして、
いい線いってるかも?って私はイギリス作家に弱いのだ。
硬い重いイギリス文学萌え〜。

「かわいい子猫ちゃん」I・アシモフ
新潮文庫と被らないアザゼルもので、当りである。 これは猫嫌いの男が、
自分の野望の為に、 猫好きを演じるという素晴らしい作品である。
まともな男に猫好きがいてたまるか、コノヤロ! 猫、猫、にゃんにゃんにゃん、
こっちおいで〜、などと成人した男が心底から喋っていたら
私はそいつは頭がおかしいと思います。
猫が好きと語る人は自分の利益追求の為にお芝居しているのだという真理を
明らかにした素晴らしい科学的な作品。 神や宇宙人や超能力を信じる人たち同様に、
本当に猫が好きな人ってき○がいだよね?

ジャガー・ハンター」R・シェパード
豹人間とジャガー・ハンターのファンタジー恋愛ドラマ。
こんなもんより、「闇のパープルアイ」の方がSFとしてもドラマとしても上です。
殺そうとした豹が女に変身して自分を誘惑する! 俺はどうしたらいいんだ!ってか?
お前馬鹿か、さっさと殺せよと思いました。
美少女にマトリクス転換して殺さないでと訴えても、無駄だ!
とあっさり殺した超人ロックの素晴らしさに惚れ直しましたね。
このジャガーハンターは豹人間とズボズホやりまくり、
月の力を借りて異次元にあるという豹人間の国に行くんだという妄想に憑り付かれ
豹人間を守る為、人間に発砲してしまうのですよ、愛は種族を越えるってか?(爆)

「メイのクーガー」U・K・ル・グィン
実はこの作品が一番の屑である。 文学というか、虚構性の持つ力を過信しすぎている。
短編だから、手抜きの屑と軽く流せばいいが、 もし、このネタで長編書いたら、
いや、ネタは長編に使っているらしい、 構成ですね。
この二部構成というのか二重構成で長編書いたら、
環境保全団体から、もっとも森林資源を無駄に使った小説として
環境テロリストを送られるに違いない。
ル・グィンは死んでいいです。 もう、死んでいるのかもしれないが。
「闇の左手」読んだ時点でル・グィンは糞だと見捨てたので、 他は読んでないが、
なんでル・グィンがSFの女王と絶賛されたのか理解に苦しむ。
「メイのクーガー」に匹敵する手抜きの屑SFは「宇宙消失」ぐらいのもんだろう。
絶対感動出来ない小説のフォーマットを発見したル・グィンは天才と言えるかもしれんが、
本気なのか冗談なのか判断できん。考えられるのは、 事実として提示されるのが、
ル・グィンの近親者の本当の経験であり、
マジに死者を弔う意味で小説に捏造したということだが?
まともに「死者の代弁者」のような小説にすれば、それなりに感動的だが、
この小説は最初に事実が語られ、その事実は夢がないので、
私が小説に書き直しましたという構成なのだ。
小説部だけを発表すれば、普通の小説だが、
前半にあじけない事実というオマケがついていては、
どんなに小説部が巧く書けていても、白けるだけだと思う。

「パスクァレ公の指輪」A・デイヴィッドスン
これはラストで判断して無理矢理猫小説として収録したのだと思う。
猫はどうでもいい小説。 ただ、小説としてキャラや設定やセリフ回しが魅力的だ。
というわけで、実はシリーズ化されている人気作である。
ヨーロッパの架空の王国が舞台。 ユーモアファンタジーってとこか。
魔法が使える世界なのに、主人公が科学で降霊術のトリックを暴くのが面白い。
暴かれた降霊術師は闇と契約している本物の魔法使いだったからさぁ大変。
主人公はギャグを連発する脇役たちと生活しながら、 霊の攻撃にも対処する必要に迫られる。 科学が絶対の切り札ではないのでSFとしては弱いが、
馬糞まみれの中世都市を蒸気自動車で疾走する主人公はナイスである。
もっと科学対魔法の対決を増やせば、大傑作になっただろう。
長編があったら読んでみたいと思わせる作品。 誰かパクッて書いて下さい。

不思議な猫たち (扶桑社ミステリー)

不思議な猫たち (扶桑社ミステリー)