『革服の男』 エドワード・D・ホック  中井京子ほか訳  光文社文庫

・キルディア物語
・熱気球殺人事件
・五つの棺事件
人狼を撃った男
・七人の露帝
・不可能夫人
・バウチャーコン殺人事件
・ジプシーの勝ち目
・呪われたティピー
・レオポルド警部のバッジを盗め
・刑事の妻
・革服の男

日本で独自に編んだ短編集である。
サム・ホーソーンものが二作入っているのは価値があるが、
文芸誌に発表されたくだらねぇ作品も混じっているので、
短編集としては買うと損した気分になります。
シリーズキャラクターをいっぱい持っているホックなので、
共演作品も二つ入っているが、単独なら主人公のキャラなのに、
共演させると何故か、片方だけが目立つのは、ちょっとまずくないか?
医師探偵サム・ホーソーン対西部探偵ペン・スノウはホーソーンの勝ち!
(主演作品では探偵を張るスノウが、依頼人としてホーソーンの前に現れる)
怪盗ニック・ヴェルベット対レオポルド警部はニックの勝ち!
(レオポルドはYYZ123の謎を解くだけ)
虐げられているマイノリティを擁護するテーマ性が匂う作品が多いが、
女性を、妻を大事にしないと酷い目に遭いますよという作品は無意味だと思った。
今はやりのドメスティックバイオレンスかい!
女性に暴力を振るう野蛮な男は本なんて読まないだろうし、
暴力を振るわない優しい男は、挿入もせずに一人で静かに読書しているだろう。
社会性溢れる問題提起しても、それが意味あるところに届くとは思えない。
女性ファンに共感してもらいたいということか?
まあ、基本的に文学は女子供のものだけどね。
読書なんていう女々しい事している私が悪かった。
書を捨てて街へ出て、女を犯しまくる立派な社会人になりたいと思います(藁
冗談はこの程度にして、真面目に考察しますと、
やはり、サム・ホーソーンものが光っていますね。
壮大な魅力的な謎を提示すれば、
解決編は小技の継ぎ合わせでもなんとかなるというホックは素晴らしい。
ややアンフェアにも思えるが、アガサ・クリスティよりは真摯な姿勢が感じられる。
人間努力です。小さな理屈も重ねれば、どんな不可能な事も説明出来るのだ!
革服の男の手法を使えば、貴方も必ず推理小説が書けます。
幽霊などの超常現象は、自分が目撃しても存在しないと証明出来るのだ。

革服の男―英米短編ミステリー名人選集〈5〉 (光文社文庫)

革服の男―英米短編ミステリー名人選集〈5〉 (光文社文庫)