『王家の風日』 宮城谷昌光 文春文庫

宮城谷昌光の最高傑作は常に最新作と言われる。

つまりデビュー作のこれは、文体も構成も未熟である。

師匠の立原正秋がデビュー前に2000枚のストックがあったと聞かされて、

宮城谷昌光も出版出来なくてもいいから、とにかく書くのだと書いたオナニー作品である。

自分の修行の為、自己満足の為に書いた作品だが、

漢字オタクに目覚めて、字源と中国古代史の史料を読み耽った宮城谷昌光であるから、

ズリネタは漢字(の元の甲骨文字)を発明した殷文明である。

殷に正しく萌えるには、殷以後に作られた漢字熟語を使用してオナニーするのは、

殷に失礼であると、使用する漢字に細心の注意を払ったので、

文体がこなれていないように思えるのは仕方がない。

ようは、筒井康隆の「唇に残像を」と同じようなネタだね。

単純に使える五十音を減らして書くより、遥かに知性と教養が要求される見事な芸で、

誰でもやってるオナニーを気持ちいいからいいのだと発表する小説家どもには、

宮城谷昌光のザーメンでも飲んで反省してもらいたい。

しごくだけで、本人は気持ちいいかもしれないが、

芸のないオナニーを金払って見る奴のことも考えろ!

持ちネタのクリエイター憎悪に走ってしまったが、本作に話題を戻すと、

漢字という素晴らしいものを発明してくれた殷に感謝する小説なので、

当然殷贔屓で、主人公は殷最後の帝の受王(紂王)みたいなもんである。

カバー裏には箕子が主人公みたいに書かれているが、

視点が次から次へと変わり、誰が主人公なのか明確ではないのだ。

殷周革命ネタというと誰でも主人公にしたがる太公望は脇役で100P過ぎと、

300P過ぎにちょっと出て来て、箕子の凄さに恐れ慄いて、逃げ回っているだけである(藁

箕子が有名でないのは、太公望が箕子との直接対決を避けたからである。

勝てない相手を活躍させないように、歴史の表舞台に立たせない作戦を取った

太公望もそれなりに優秀であったと判るから、太公望マンセーの人にも、

読む価値はあるだろう。

本作で一番いやらしい悪党は周の文王と太子発である(藁

紂王の優秀さと純粋さが胸に迫ります。

ちなみに弁慶の立ち往生の元ネタの三国志悪来典偉の元ネタの悪来(えい来)は、

紂王の親衛隊だったのでおわすよ。

三国志マンセーの私にはとっても勉強になりました。

箕子が有名ではないと書いたが、史記の方の名を書けば、ピンと来るか?

商容のことでおます。

えっー!そうだったの?

しょうよう〜。ちゃんちゃん。