愛知県芸術文化センター第35回日展東海展

主流派保守派の無難に綺麗で上手なだけの絵が入選する日展に期待した私が馬鹿でした。
作者の魂の感動が伝わってこない似非芸術品の群れでした(藁
いくらなんでも、日展作品にひとつも感動出来ないのはマズイだろと、
東海展で展示されなかった作品も載っている図録(3200円)を買って、無理矢理感動する作品をでっちあげる(爆。

●寒夜のライトアップ/西田亨(東京)
タワーの光と月の光がいい感じ。

●男とイヌ/日野耕之祐(東京)
色彩主義と表現主義印象主義のテクニックを巧くまとめている。。
女も一応描かれているが、オマケ扱いで、女をモチーフにするのは似非芸術だと主張しているようでナイスである。
手抜きのだだくさな絵に見えるが、知識のある人が見れば、
この作者はキュビスムシュルレアリスムも理解していることが読み取れて、渋い絵画マニア向けのクイズ要因もあって楽しいです。

●光昏/浅井光男(愛知)
マグリット風味でよろしいでしょう。
壊れかけの人形がいい感じだが、なんで女の子なんだろう?
乳首までしっかり描かれてますぜ(藁
乳首が必要な等身大の人形って何に使うために開発されるのかしら?
作者はロリコンで少女を脱がしたが、それをあからさまにしたくなくて、人形として描いたのか?

●広場/綱島徹夫(大阪)
地下街の広場に10人ほどの人物が孤独に佇み、あるいは通り過ぎていきます。
手抜きと計算の絶妙の按配がナイス。

●冬の陶土/浅見嘉正(埼玉)
冬の陶土を眺めながら休憩している肉体労働者の絵。
一応労働者賛歌の素晴らしい絵だと解釈しておこう。
労働者の作業着がうそ臭いですがね。
冬の屋外作業(平地での土方)としか思えないが、
鳶職人のような地下足袋履いて、素手で煙草持ってます。
しかも岩に座ってます。
曇り空の、吹きっさらしの場所に、ビシっと背筋を伸ばして休憩している労働者は不自然に感じる。
休憩用のプレハブ小屋ぐらい、近くにあってよい筈だが…。

●闘牛/越智節昇(愛媛)
傷つき引退した元闘牛が、過去を回想してる絵(だろう?)
牛さんの悲しげな目が良い!
牛はもっとも進化した哺乳類ですぞ、
人間は胃が一つしかないのに、牛は4つもある!
牛さん、ビバ!ハァハァハァ…。

●実験室・種の保存/佐々木寅夫(広島)
三流SF小説に三流挿絵画家が付けた挿絵みたいだが、
テーマとモチーフが日展作品としては異色で良いでしょう。
ごちゃごちゃと描き込みすぎて汚く見えるのは残念。
怪しげなマニュピレーターがガンダムの足に見えるのは私だけか?(藁

●秤のある室内/小菅章雄(埼玉)
モチーフも良いが、剥がれかかった壁の模様が、
一反木綿やバンデル星人に見えてナイス。
作者は歌舞伎役者に見て欲しいのだと思うけど(爆

●青信号/西山松生(東京)
渡っている少女たちは、危険な赤信号です(藁。
夢遊病者に見えます(爆

●黙示録第5章/森勇(愛知)
原則として宗教画は評価しないが、
これは骸骨たちがムンクばりに迫力あるので無視するのは忍びない。救いがあるのかないのかよく判らないので、
古臭い宗教画と斬捨ててはいけないかもしれん。
新約聖書の知識はほとんど無くなったので、判断に悩む。
ここにロンギヌスの槍は出てきてOK?

●muse/岡田正己(愛知)
頬を染めて、色っぽい眼つきで、悩ましげに横たわる美少女、
なら、猥褻画だが、これは髭面のおっさんである。
おっさんがmuseであって何故いけない!
素晴らしい芸術作品ですな。

●忘れられたもの/佐々木かず子(新潟)
アンフォルメタルぎりぎりの表現主義だが、
見ればみるほど深読みできそうでよさげ。
人間が、日本列島に、そして地球そのものに見えてきます。
人間の女に見えるものは、山椒魚にも魚にも見えてきます。

●夏の日/鈴木英子(神奈川)
ジュゼッペ・アルチンボルト風味のアンリ・ルソー
木の葉に見えるが、よく見ると様々な動物が木の中に隠れています。
緑色の髪の毛のデフォルメされた人間のような化け物がナイス。
完璧な騙し絵になってないのは惜しいが、
ルソーの水準作よりはインパクト強くて良いと思う。

●悲しみの旋律/武敏夫(東京)
足の不自由なヴァイオリン弾きが、路上で座って項垂れており、
それを室内から窓ガラス越しに無数の人物が注視しています。
ドラマ性充分で感覚がよく伝わる良い絵だと思うが、
舞台はヨーロッパ臭いので、クリスタルナハトとかプラハの春とかを暗示させるようなものも欲しかった。
天皇も高覧する日展南京大虐殺ネタやれとまでは言わんが(藁

●長椅子と猫/橘貴紀(埼玉)
猫以外に男性(作者に親しい人か?)も描かれているが、
この男性の表情が、
「俺より猫を優先しやがって!」
と訴えているようで面白い。
他人の命より自分のペットの命の方が大事にされるべきだと思っている、人権無視の猫マニアには気をつけましょうね(藁

●夏の日/古根益雄(茨城)
同じテーマやモチーフばかりでうんざりする日展だが、
この夏の日は凄いですぜ!
コンクリートから突き出た鉄筋が赤錆びて欠けている様子をモチーフにしてます。
夏の陽射しの強さも伝わるし、テーマとしては諸行無常とか、
パンタレイとか、色々と深読み出来ます。

●第二名神高速/三浦泉(石川)
建設中のコンクリート桁をうつろに描写した、
道路公団の悪を糾弾する素晴らしい作品(そうなのか?藁
時代的社会性を反映する作品がほとんどない日展に、
時代に即した固有名詞があると感動します。

●青春/薬本武則(岡山)
ジォルジオ・デ・キリコもどきの色彩主義。
憂鬱な街の陰に居る男は、どすぐろい泥人形へとメタモルフォーゼしてますが、
少女は光の中でノーテンキに光と戯れています。
印象主義を揶揄した知的レベルの高い作品ですな。
少女が後姿なのも、フリードリヒやスピリアールトを思わせてヨサゲ。
青春時代に真面目に悩んで苦悩するのは、やっば男性だよな。
これが、今回のベスト1ですな。
珍しい苗字なので覚えやすい。
日本人画家は私は、薬本武則と森村泰昌加藤泉を追っかけるぞ!