『拳銃を持つヴィーナス』 ギャビン・ライアル 早川ミステリ文庫

拳銃を持つヴィーナス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

拳銃を持つヴィーナス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

全ての美術ミステリは

この作品の一エピソードにしかすぎない究極の美術ミステリ。

ミステリ=殺人=拳銃ということで、

拳銃と美術ネタが完璧に融合した見事なトリックが出てくる

美術ミステリの完成形。

美術ファンは他の芸術ファンも兼ることが多いが、

音楽ネタでパブロ・カザルスが出てくるのも文句無し!

ゴヤを生んだ世界一の美術大国のスペイン人女性が、

ニカラグア大統領になる為に美術館を建てようとする話である。

展示品購入費用は2億5千万£!

主人公のチームは絵の買い付けにヨーロッパ中を駆け巡る!

大金に惹かれ危険な奴等が来る!

ラストの大ピンチに拳銃が無い状況に追い込まれており、

弾丸から自作始める場面は、

デズモンド・バグリィ の『高い砦』 を彷彿させ大興奮しました。

直裁なセ○○スシーンは無いが、

男女が共同して食器を洗うシーンがあり、

例によってジェンダー観も素晴しい!

フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス や

ピカソやミロやポール・セザンヌ

モネやゴッホレンブラントフェルメール

ダ・ヴィンチやラファエルロの話題とともに、

ティツィアーノ(チチアン)がなんども出てくるのが、

ジョルジョーネの幻の絵画「拳銃を持つヴィーナス」への

伏線になってるのが巧いです。

小説タイトルは暗喩だと誰もが思うが、

固有名詞だったとは憎いねぇ。

このネタを超えるには、

「核ロケットランチャーを背負うモナリザ」ぐらいしかありえないが、

そんなもん贋作だと誰もが判るので、

この作品が美術ミステリとして上限ということです。

ライアル全15作品でこれが一番好き!

ところでライアルは元新聞記者だが、

マイクル・コナリーやガルシア=マルケスもそうだね。

元新聞記者の小説家は素晴しい!というMY法則を確立したいが、

元新聞記者の小説家、他にもいたら教えてチョンマゲ。

日本の新聞記者はダメポだろうけどw