『僕僕先生』 仁木英之

僕僕先生 (新潮文庫)

僕僕先生 (新潮文庫)

中華ファンタジーだが、

中国の歴史全般のネタが至る所に登場し、

歴史小説家として高い期待が出来る傑作である。

デビュー作だが、

文章に難があるところは一箇所しかなかった。

難がある文は人称代名詞の使い方が判り辛いというだけで、

悪文だが間違いというわけではない。

ワンセンテンスに別人二人を同時に彼として描写していただけ、

致命的欠点というわけではない。

孔子の言葉「怪力乱神を語らず」が

「怪力乱心を語らず」と表記されている箇所もあるが、

単なる誤植でしょうな。

文章は巧いのでスラスラ読めますよ。

内容は、県令の息子で22才のニートが、

数千年(一万年以上?)生きている仙人に見込まれて、

冒険の旅に出るという話です。

で、この仙人が、十代の美少女の外見をよく使うので、

ラブラブファイヤーな展開もあります。

美少女仙人は、ステロタイプな白髪の長髭の老人体にも変身するので、

主人公のニート青年は、

やってる最中に老人体に変身したら、

とんでもないトラウマになると、

最後の一線は越えないので上品にまとまっている。

ストーリーの難は、

主人公の父親が金持ちなので、

主人公はニート生活していたわけだが、

父の愛人が財産目当てに主人公を亡き者にしようとする可能性が、

一切語られてないのはちょっち疑問に思った。

冒険の旅も、主人公が知恵を使って危機を脱するシーンが欲しかった。