『スパイの誇り』 ギャビン・ライアル 早川ミステリ文庫

スパイの誇り―ランクリン大尉シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

スパイの誇り―ランクリン大尉シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ランクリン大尉シリーズ一作目。

600P越えの大長編に思えるが、

実質は四つの中篇のオムニバス。

ジェンダー観は例によって素晴しいが、

口にするのも汚らわしい職業のスパイが主人公では、

ライアルの筆もいまいち冴えない。

君にはスパイの才能があると煽てられて、

ホイホイとスパイになるような人物は人格障害者だろう。

魅力的なかっこいい男を描かせたら世界一のライアルなので、

もちろん主人公は望んだわけでもないのにスパイにさせられる破目になるのだが、

初期の単発作品四作に比べるとやっぱ落ちるな。

スパイものだが第一次世界大戦前から物語が始まるのはレアか?

スパイとして与えられた任務をこなすだけではなくて、

第一次大戦勃発を防ごうと画策する主人公はスケールでかいが、

明確な第一次大戦ネタは最後のエピソードだけで、

残りは、海軍の軍資金を守る話、

フランスに暗号表を届ける話、

ドイツにスパイ網を構築する話で、

歴史スパイ小説としては、ちょっとネタが浅い。

ライアルコンプを目指している人は、

これは一番最後に読めばいいか?