「ピロクテテス」『ギリシア悲劇 II ソポクレス』 高津春繁他訳 ちくま文庫

ギリシァ悲劇を読む―ソポクレス『ピロクテテス』にみる教育劇

ギリシァ悲劇を読む―ソポクレス『ピロクテテス』にみる教育劇

英雄ヘラクレスは死んで神に生まれ変わることを決意し、

息子に火葬を頼むが息子は拒否。

ピロクテテスがヘラクレスの体に火をつけることになった。

ヘラクレスはピロクテテスに感謝し、

名弓を授ける。

ピロクテテスはトロイヤ戦争に従軍するが、

行軍中に蛇に咬まれ、

足が腐って、歩けなくなり、

足手まといと友軍に判断され、

無人島に置き去りにされる。

トロイヤを落とせないギリシャ軍が神託を伺うと、

ピロクテテスが名弓を使用しないとダメポとのこと。

オデッセウスは名弓があればよかんべと、

名弓回収作戦を実施する。

置き去りにされたことを恨んでいるピロクテテスを騙して、

弓を取り上げるには、ピロクテテスと面識がない若造の方がいいだろう。

オデッセウスはアキレスの息子に密命を与えるが、

この純朴な若者は、

ピロクテテスの人柄に触れ、

ピロクテテスから弓を取り上げて再び置き去りにするなんて、

僕にはできまっしぇーん!

と苦悩する。

ピロクテテスを故郷に帰してやりたいが、

オデッセウスの命令に背いたら、

ギリシャ最大の英雄の復讐は想像するだけで恐怖である。

二人は無人島で立ち往生することになるかと思われたが、

神となったヘラクレスが、デウス・エクス・マキナし、

ヘラちゃんが、ピロちゃん再びトロイヤに行きんしゃい。

と要請してハッピーエンドとなる。

悲劇だったのは、ピロクテテスの無人島での十数年間と、

オデッセウスのパシリにさせられたアキレスの息子のエピソードざんす。

英雄譚、冒険譚をオデッセイと言うのは、オデッセウスが語源だが、

ソポクレスの戯曲では、この作品以外に、

オデッセウスを脇役の悪役にしたものが多くて、

ちょっと意外でしたな。