『宇宙船オロモルフ号の冒険』 石原藤夫 早川

第一話 『宇宙船オロモルフ号の危機』
第二話 『宇宙船オロモルフ号の挑戦』
第三話 『宇宙船オロモルフ号の復活』
第四話 『宇宙船オロモルフ号の冒険』
最終話 『宇宙船オロモルフ号の凱歌』

異色作。ハードSFというと物理SFか化学SFが殆どであるが、

本書は世界でも数少ない数学SFである。

巻末のオロモロフ号の図解というか、存在座標構成表は、

工学博士である作者自身がコンピュータで描いたものである。

科学的に正しい宇宙船であるオロモルフ号には全長も全重も表記できない。

科学的な宇宙船は光速に近づくにつれ、

ローレンツコンストラクトで全長は縮み、全重は増加する。

オロモルフ号を存在させているのはその名の通り正則的な調和関数なのである。

そして毎回毎回オロモルフ号を崩壊させようとするのは、

数学の命題なのである。

無理矢理それを現実的にすると、とてつもなく幻想的なものとなる。

オロモルフ号の前に立ち塞がったのは、

「悪魔」「銀河」「ブラックホール」「宇宙の果て」「無限」である。

SF小説でしか表現できない楽しい物語であるが、

イメージが情景にならないのはツライね。

無理に絵を想像したら眩暈がします。

最終話のアレフ0、アレフ1は見ようとしちゃいけん、

見えたら最後、脳が破裂してぶっ倒れるぞ!