『名演奏のクラシック』 宇野功芳 講談社現代新書

宮城谷昌光が「パプロ・カザルスのCDは無い」と言っていて、

「そんなアホな!世界一の芸術大国のスペインの天才チェロ奏者の演奏がCD化されてない筈はない!」

と思って、調べたくなってこの本を買った。

結論から言えば、もちろん出てます。

ただし、戦前のSP盤の復刻版ばかりで、録音状態が悪く、

自信を持って人様には勧められないということです。

人様に勧められるチェロ奏者のカザルスのCDは無いが、

指揮者カザルスなら、実はあると、この本に書いてあったのは収穫だ。

モーツァルト交響曲第35番ニ長調「ハフナー」、同40番ト短調、同41番ハ長調ジュピター……CBS・ソニー66DC5098〜100

宮城谷昌光が勧めていないのは、今一不安だが、宇野功芳のこの本を読んで、

宇野功芳は信頼に足る評論家だと思われたので、

チェロの神様カザルスとともに、指揮者カザルスにも注目したいと思う。

 で、宇野功芳が信頼できる根拠として、この本の中から名セリフを列挙する。

「感動出来ないものは芸術ではない」

「音楽性が優れていても芸術性が優れているとは限らない」

「穏健すぎるものと前衛すぎるものは芸術ではない」

「評論家は、良い悪いと好き嫌いを混同してはならない」

「日本のクラシック界のレベルが低いのは、音大生のレベルが低いから、ようは、日本の音大の教育レベルが低いのである」

自身も音大卒業してるのにアカデミズムを批判出来るのは、

宇野が本物の証拠だね。

宇野は音楽雑誌での批評を主な活動の場にしているみたいで、

学校関係者とのしがらみはなく、

孤立無援でも真実の批評を続けてきたらしい。

誰もが誉めた演奏でも、宇野一人が扱下ろしたこともあったそうです。

読んで面白いミーハーネタをもうちょい書いておく。

小沢征爾は軽薄である。

 しかも、音楽マフィアの手先として、他の音楽家の演奏機会を奪う圧力を劇場にかけたことがある。

 小沢の優れている点は、抜群の勘の良さである。

 一流の演奏家は小沢の指揮なんか無視して演奏するが、小沢は演奏にタクトを上手に合わせることが出来る」

おい、ちょっと待て、指揮者が演奏に合わせてどうする!(藁

まあ、小沢征爾の父は板垣征四郎石原莞爾のファンで、

征爾は満州で中国人の人権を侵害し続けた男の子供だからな。

二流に育つのも無理はない。

ブーニンのベストはハイドンのピアノ・ソナタ第23番であり、ブーニンのつまらないショパンに群がる人は付和雷同しているだけ」

カラヤンは芸術家ではない。一流のデザイナーなのだ。

 魂の深遠さ、その苦しみや痛み、情熱や歓喜といったものとはまったく無縁、

 ただ表面が美麗でこころよく、スマートなだけ」

で、お勧めリスト。

指揮者トスカニーニ/ベートーベン=交響曲第1番ハ長調……RCA BVCC7003−7

指揮者メンゲルベルク/バッハ=マタイ受難曲……フィリップス 30CD307−9

指揮者メンゲルベルク/ベートーベン=交響曲第1番ハ長調……フィリップス 30CD301

指揮者メンゲルベルク/ベートーベン=交響曲第8番へ長調……フィリップス 30CD305

指揮者モントゥー/ドビュッシー=映像……フィリップス 32CD597

指揮者モントゥー/ラヴェル=「ボレロ」「マ・メール・ロワ」「ラ・ヴァルス」……フィリップス 25CD5052

指揮者ワルター/ベートーベン=交響曲第2番ニ長調……CBSソニー 28DC5037

指揮者ワルター/ベートーベン=交響曲第6番へ長調「田園」……CBSソニー 22DC5581

指揮者カザルス/バッハ=無伴奏チェロ組曲……エンジェル CE30−5213−4

指揮者カザルス/ベートーベン=ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調「大公」……エンジェル CE30−5406

やっぱ疲れる、こんで止め。

最後の最後に宇野の名セリフ中の名セリフでこの文を終了する。

「芸術の最後の決め手は、侘しさである。」