『幸福な無名時代』 G・ガルシア=マルケス 旦敬介訳 ちくま文庫

幸福な無名時代 (ちくま文庫)

幸福な無名時代 (ちくま文庫)

小説の短編集ではなくて、ベネズエラねたのルポルタージュである。

マルケスベネズエラの週刊誌の記者だった時代に書いた記事を集めたもの。

コロンビアの新聞記者だったマルケスはヨーロッパ特派員としてヨーロッパに派遣されたが、

派遣元の新聞社がコロンビア政府を批判する記事を書いたため政府に潰され、

マルケスはヨーロッパに取り残される(藁

別の新聞社が、帰国旅費を出して雇おうか?

と申し入れてきたが、マルケスはヨーロッパ文化を学びたくて、

貧乏暮らししながらヨーロッパに留まり、小説を書き始める。

が、コロンビア人の小説がヨーロッパで売れるわけが無い(爆

ベネズエラの週刊誌から申し入れがあって、諦めてベネズエラに渡ったのだが、

ヨーロッパで小説書いていたくせが抜けず、

ベネズエラの政治や経済や特異な人物ネタのルポルタージュの筈だが、

ほとんど小説に近いルポもある。

小説家としてのマルケスも一流とは思わないので、

この本の中のベストは、数奇な運命を辿ったベネズエラ人の物語ではなくて、

経済ネタの「ベネズエラは犠牲を払うに値する」だと思う。

独裁者を倒したものの、独裁者の無茶苦茶の政治の付けで、

新生ベネズエラ民主政府には、外国借款3億ドルの問題が発生する。

貧乏な国が外国に3億ドルもの金借りたら、将来破綻することが目に見えている。

が、今すぐに3億ドルないと、現在の地獄を解消出来ない。

ベネズエラ政府は外国に金借りるつもりであったが、

一人の洋服店店主の行動から、あっと驚く解決策が誕生する。

「素晴らしい国ベネズエラは、国民が犠牲を払うに値する。

 私は個人資産を政府に寄付します。

 国民全てが犠牲を払えば、3億ドルなんてすぐ集る。」

政府は全国民に寄付をお願いするキャンペーンを張る。

低所得者からは1ドルぐらいしか寄付が集らないが、

高所得者はそれなりに出したので、3億ドルを政府は工面出来たのです。

感動のキーポイントは、金持ちが率先してお国の為に金を出したことである。

日本と日本国民に置き換えると、ベネズエラの素晴らしさが理解出来ますね。


   では、声高々に叫べ!

「国民に痛みを強いる前に、金持ちの政治家は個人財産を政府に譲渡せよ!」