『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』 スティーヴン・ジェイ グールド 早川文庫

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

五億年前の地層から、化石として残ることが滅多にない

軟体性動物(軟体動物ではない)の化石が大量に発見された。

残りやすい脊椎動物の化石もあったが、

ほとんどの化石は既存の種の先祖としてもユニークすぎ、

そして、生物分類学のレベル

界>門>綱>目>科>属>種の

上位の第二レベル、

32しかない門に含まれない新種(新門)が、

20も見つかったのである!

ホモ・サピエンスは脊索動物門(脊椎動物とその仲間)である。

その他の門は、

海綿、刺胞、環形、節足、軟体、棘皮、有櫛、扁形、腕足、線形などである。

門は32でなくて20とする説もある。

現在の2倍の門が五億年前には存在していたのである。

そして、それらは現在の動物の門に含まれないのであるから、

とてつもなく摩訶不思議な形態をしていた!

が、化石は押し潰された状態で見つかる。

単純な生物から複雑な生物に進化して生物は多様性を獲得すると信じていた発見者は、

異質な外見を正確に復元しようとせず、

亜綱や亜目をでっちあげて、

全て既存の門にこの異質な動物達を分類した。

本書は想像力の限界を越えた異質な生物が、

再発見される物語であり、

進化論の常識が覆った知的興奮する物語である。

新しく発見された20の門のうち、

現代に子孫を残せたのは4門のみ。

だが、絶滅した16門が環境適応に敗れた形態とは思えない。

進化した生物が生き残るというのは正しくない。

絶滅するか否かは運である。

歴史のテープを巻き戻し、

100万回進化させたとしても、

地球に知能(意識)のある生物が進化して現れることはないだろう。

我々が生きているのは単に運がよかっただけという、

人間原理を否定するグールドは素晴しい。

幸運ならまだしも、

宇宙にとって生命は不幸な事故の結果だというナイスな文もあります。

ティーヴン・ウェッブの「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」

を補填する素晴しい書である。

進化するのは必然ではない。

35億年前に原核生物が発生したが、

真核生物(まだこれも単細胞生物である)に進化するのに、

20億年もかかっているのである。

生命の歴史において進化しなかった歴史の方が長いのである。

知性体へと進化するというか、

進化なんて起こる前に、

生命の生まれた惑星が寿命が尽きて消滅するのが確率的には正しい。

意識があるので人間は存在意義を考えてしまうが、

意識など宇宙にとってあってはならない事故である。

人間が生まれる為に宇宙が誕生したなどという矮小な人間原理は、

科学の名に値しないポンポコピー理論である。

ティーヴン・ウェッブの「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」

の方が50倍面白いが、

本書も科学的思考が身に付く良書である。