『現代短篇の名手たち8 夜の冒険』 エドワード・D・ホック 早川文庫

「フレミング警部最後の事件」
「どこでも見かける男」
「私が知らない女」
「夜の冒険」
「影の映画祭」
「くされ縁」
「正義の裁き」
「空っぽの動物園」
「静かに鐘の鳴る谷」
「やめられないこと」
「もうひとつの戦争」
「不可能な"不可能犯罪"」
「出口」
「大物中の大物」
「家族の墓」
「サソリ使いの娘」
「知恵の値」
「二度目のチャンス」
「スペインの町で三週間」
「ガラガラヘビの男」

本書のベストセリフ

「男たちときたら、戦争から戻れば、殺したり殺されたりのことなんか、

全て忘れたいと思いそうなものなのに、

わざわざ月一回集まって、思い出話をしようだなんて」


題と最初の1P読んだだけで、

犯人もトリックも予測出来てしまうような

本格推理としては低レベルの作品ばかりだが、

それ故解決編をラストの1行であっさり済ますのがスタイリッシュな切れ味で、

ホックの職人芸が光る。

単純な話ばかりに思えるが、

「静かに鐘の鳴る谷」は深読み出来るよね?

あれは大量殺人をする宗教家を揶揄した話だよねW

反戦観、ジェンダー観、マスゴミ観も読み取れる話もあり、

パズラーというよりはテーマ性メッセージ性に瞠目すべき文芸ミステリか?

「夜はわが友」みたいに純文学に近づきすぎると白けるが、

この短編集はパズラーではないホックを知るには最適の短編集だと思う。

「静かに鐘の鳴る谷」のネタバレ書くので未読の方は以下の文は読まないで下さい。

これだけは明確に真犯人指摘してないので、

私の解釈は違うかもしれないがw

神父が大量虐殺犯人である。

教区に人が居ないのは神父が全員を殺したからである。

引越しの荷造りの荷の中身は死体である。

後に谷に捨てる予定であった。

表の犯人の拳銃を発見して、すぐ使える状態だと一目で見破るのは、

神父も殺人の経験を持つ銃に詳しい存在だと仄めかしているのだ。

次の赴任先が決まってないのに引越しの準備しているのも伏線ざんす。