『海の闇、月の影』 篠原千絵

海の闇、月の影 (1) (小学館文庫)

海の闇、月の影 (1) (小学館文庫)

仲良しの双子の女子高校生は、遊びに行った海の洞窟で

古代の謎のウイルスに感染。

超能力が目覚めてしまう。

超能力者になっても、それを恋愛の駆け引きにしか応用しない二人であったが、

姉の方は男のハートをGETする為だけに超能力を使う馬鹿馬鹿しさに気付き、

世界征服の野望を胸に抱くようになる。

二人以外にも次々と超能力者が現れ、

姉陣営と妹陣営に分かれての斬新な超能力合戦が繰り広げられる。

愛した男の命さえ犠牲にする覚悟で世界征服にのりだした姉の野望を

果たして妹は阻止出来るか?

という話です。


SFとしてのアイデアジュブナイルSFレベルであるが、

漫画表現としてのSFとしてはオリジナリティがもの凄い。

一例を挙げると、この漫画に登場する透視能力者は、

目玉だけをテレポーティションさせる。

空中に目玉だけが浮かぶ絵が提示される。

SFというより怪奇漫画の発想の延長上の作品と評するのが正しいかと思うが、

空中に浮かぶ目玉の絵というと、象徴主義オディロン・ルドン

シュルレアリスムレメディオス・バロも描いている芸術的モチーフである。

それ以外に闇の海の上を幽かな月明り浴びて飛行するシーンも、

漫画というより芸術的絵画の感動に迫る名シーンである。

重い暗い葛藤を抱きながらも、かろやかに飛行するキャラの

アンビバレンツが素晴らしい!

篠原千絵ストーリーテラーであるが、絵単品の画家としても成功したと思う。

それぐらいこの作品は絵画的に芸術的なシーンが頻出する。

何十万も出してラッセンクラスの絵を買う奴はアフォである。

篠原千絵の漫画の中には素晴らしい絵がイパーイあります。