『ラスト・コヨーテ』マイクル・コナリー 古沢嘉通 訳 扶桑社ミステリー文庫

ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)

ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)

ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)

本書のベストセリフ

ハリー・ボッシュ「どんな人間でも価値がある。さもなければ、だれも価値がない」


“ハリー・ボッシュ”シリーズの4作目。

例によってどんでん返しは凄いが、

本格推理小説としては今回は四つ星。

33年前の未解決事件を主人公が私的に(銃も持たず!)捜査する話だが、

実質は精神カウンセリング小説であり、

推理小説としてのワクワク感スビード感に欠けたのが残念。

現在でも殺人事件が起こるのは下巻に入ってからなのはやや構成力が弱く感じた。

もっとも、この被害者は、推理小説史上もっとも意外な被害者と言っていいだろう。

主人公と同じく、被害者の名を聞いた時、私はぶっとびますた。

シリーズものだが、まさに毎巻が最終回のような凄さである。

精神カウンセリング小説として高評価与える人が多いと思うが、

元ネタはF・ポールの「ゲイトウエイ」 だよね。

盾にならずにはいられないゲッタウェイフェイスの女が出てくるが、

盾にして殺したしまったゲイトウエイガールの物語の方が私は感動しました。

本作の中でブラックホールゲッタウェイという単語が出てくるのは、

本作はF・ポールの「ゲイトウエイ」 へのオマージュとしか思えない。

コナリーはニーチェより凄い!

コナリーはボルヘスより凄い!

コナリーはマルケスより凄い!

コナリーはジョイスより凄い!

コナリーは林達夫より凄い!

コナリーは丸山眞男より凄い!

などと絶叫してきた私であるが、本作に限れば、

F・ポールの「ゲイトウエイ」 の方が感動出来ると思う。

もちろん作家としての総合評価はF・ポールよりマイクル・コナリーの方が上である。

「ゲイトウエイ」 読んでなければ、本作にも満点を与えたと思う。