『アンジェラの灰』 フランク・マコート 新潮文庫

1930年代のアイルランドの傑作貧乏話を9歳の少年の視点で語った自伝。

貧乏でも子供は無邪気というか、

主人公達天然ボケ兄弟のいたずら悪ふざけが

抱腹絶倒の面白さ。

大人が作っては考え付かない面白いエピソードのてんこ盛り。

小説として読めない事もないが、

無理に話を作らずにエピソードの羅列ですので、

ストーリー展開の面白さは期待してはいけない。

兄弟も親戚も友人も近所の人もドンドン死んでいく物語だが、

比較的金を持ってる級友の家庭の葬式に潜り込んで、

ごちそうにありつけることを期待する兄弟が微笑ましい。

小学校の教師は鞭を振るうサド教師ばかりだったが、

下巻で校長先生はまともな教師と判り少しは救いになります。

貧乏でも子供達はいたずらして陽気に逞しく生き抜きました。

というノンフィクションなので、救いがなくても構わない構造だが、

まともな教師は一人のみがリアルっぽいよね。

現実世界では0人なのが本当だろうが、

後にこうして作家になったフランク・マコートの人生に、

知識欲を植えつけた教師が一人も居ないのは、

逆に不自然ですよね。

ちなみに貧乏だったので、マコートは小学校しか卒業してません。

もちろん、図書館や親戚の大人から本を借りて読むんですけどね。


本書のベストセリフ

「幸せな子供時代なんて語る価値もない」

「神は善よ」
「そりゃ、どこかの誰かさんにとっては善でしょうよ、でも、リムリックの路地の辺りじゃどうかしらね」
「アンジェラ、あんた地獄へ落ちるよ」
「あら、私がいまいるのが地獄じゃないの ?」

「これは階級差別よ。路地育ちの少年なんか祭壇にのぼらせたくないんだ。
ほしいのはヘアオイルのある子、新しい靴のある子。
父親がスーツとネクタイ姿で、安定した仕事に通ってる子なんだ。
きれいごといってたって、信仰なんて、結局、そんなものなんだよ。
そんな信仰にいつまでもしがみついてるのは、ばかみたい」

「学べ、歴史もほかのことも、学んで自分で判断しろ。
頭をいっぱいにしろ。頭に詰め込め。そこはお前たちだけの宝の倉だ。
世界中の誰も手を出せない。
映画ばかり見て、がらくたを詰め込めば、それは頭の中で腐る。
お前たちは貧しいかもしれない。だが、お前たちの頭の中は宮殿だ」

アンジェラの灰 (上) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (上) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)

アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)

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