6月に読んだ本まとめ

6月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5291ページ

フランケンシュタイン支配 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-13)フランケンシュタイン支配 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-13)
比喩やギャグだと思ってた事がマジだと明かされ驚愕!敵も味方も良い意味で大暴走し、物語のワクワク感も大スケールアップ!前作の何がアレだったのは、ミステリとしても巧いと思いました。落雷の電気エネルギーで生まれたフランケンシュタインの怪物、落ちたのは電気エネルギーだけなのか?雷鳴、ライトニングとともにやってくる守護天使の影が、デュカリオンに重なる。次作以降で、タイムトラベルも平行世界への転移も、何でも有りを期待させる素晴しいエスカレーション!「この物語を書いていたのは、オッド・トーマス」となりそうな雰囲気です。
読了日:06月23日 著者:ディーン・クーンツ
李嗣源(下) (朝日文庫)李嗣源(下) (朝日文庫)
「陰陽不調、天地の規律が崩れても、三辰失行、星の運行が乱れても、小人訛言、つまらぬ者どもが噂を立てようと、山崩川涸、山が崩れ川が涸れても、蠢賊傷稼、賊が跋扈して人々を傷つけても恐れるに足らず。賢人蔵匿、在野の賢人を見逃す、四民遷業、人々を本業から離す、廉恥道破、道徳を乱す、毀誉乱真、賞罰を誤る、直言蔑聞、直言を侮る、のは深く恐るべし」民の為に政治して自身は贅沢しなかった後唐二代目皇帝李嗣源はデラかっちょええ!贅沢好きな馬鹿息子をお国の為に殺すのも三国志越えてる!
読了日:06月21日 著者:仁木英之
李嗣源(上) (朝日文庫)李嗣源(上) (朝日文庫)
五代十国史シリーズ第二作。朱温の次の新しい英雄は誰かなと読み始めたが、ん?時代が戻ってる!?李克用勢力視点で物語が語り直されます。前作の主人公の朱温は完全に悪役扱い。これは歴史小説パラダイムシフト、編年体の群像劇ではなくて、紀伝体歴史小説にシフトする前兆か!シリーズ最終巻が雑魚達の物語になると紀伝体ものとして完成するが、天才の仁木先生はそこを狙っているのか!シリーズ構成の最後まで見届けないと正しい評価が出来ません。全何作になるか判らないが全部読まないといけなくなった。これの主人公の李嗣源も魅力的。
読了日:06月20日 著者:仁木英之
代数に惹かれた数学者たち代数に惹かれた数学者たち
ベルンハルト・リーマンは史上最も想像力に溢れた数学者」リーマンの天才性が理解出来る良書。関数と位相幾何学を結びつけたリーマンの功績が無ければテンソル解析学も無く、アインシュタイン一般相対性理論を完成させることは出来なかった。宇宙論のストリング理論には6次元のヤコビ多様体が必要だが、多様体の名付け親もリーマンであり、ヤコビ多様体はケーリー多様体を発展させたものであり、もちろんリーマン面を含むのである。素粒子を発生させるストリングの動きはリーマン面の美しい曲率と同じだそうですよ。リーマンファンは必読の書。
読了日:06月17日 著者:ジョン・ダービーシャー
殺人契約―殺し屋・貴志 (光文社文庫)殺人契約―殺し屋・貴志 (光文社文庫)
銃も車も基本的に使用せず、酒もタバコもやらず、女にも淡白な、エコな知恵ある殺し屋のオムニバス。同じ手口を使って警察にマークされるのを避けるため、毎回違う手口を使うのが芸が細かくて良い。警察からの逃亡劇では、コンゲームの面白さもあります。何故殺し屋になったかというつまんないドラマはいっさい語られず、ストイックに淡々と臨機応変に仕事をこなしていく主人公がデラかっちょええ!全ての作品に捻りが効いている傑作。ライアルの「もっとも危険なゲーム」のオマージュもちろんやってます。本人は「悪党パーカー」だと主張してます。
読了日:06月13日 著者:山田 正紀
エステルハージ博士の事件簿 (ストレンジフィクション)エステルハージ博士の事件簿 (ストレンジフィクション)
ドタバタコメディ「イギリス人魔術師、ジョージ・ペンバートン・スミス卿」が一番好き。難解、ペダンチックとも言われるが、知らない名詞が出て来ると言うだけで、読みやすい名訳でサクサク読めます。じっくり浸るタイプの方にも楽しめます。ベラは馬糞塗れの都市だった筈だが、下ネタ大活劇ギャグタイプが少なくて残念。エステルハージ博士ものの最高傑作が収録されてないやんけ!全作書籍化キボンヌ。
読了日:06月11日 著者:アヴラム・デイヴィッドスン
新・日本の七不思議 (創元推理文庫)新・日本の七不思議 (創元推理文庫)
原日本人、邪馬台国柿本人麻呂空海織田信長東洲斎写楽、太平洋戦争と七つの謎を解くというものだが、第1作の補填ネタもあるし、密度が前作までより薄くなった感じかな〜。中の人が変わったような(-.-;)。空海二人説は山田正紀と同じだが、空の空海と海の空海が戦う正紀の方が面白かったな。
読了日:06月11日 著者:鯨 統一郎
「無限」に魅入られた天才数学者たち「無限」に魅入られた天才数学者たち
実無限を考察したカントールに「数学は無限を扱うべきではない」と言ったクロネッカーが悪役扱い(犯人などという表記もある!)される、数学史的には正史よりの、無限を必要とする解析学(微積分学)者、集合論者の悲劇に焦点を当てた伝記本だが、これをつまらないと思う人は、離散数学(代数学)寄りの思考者だと思うので、クロネッカーや野崎昭弘先生の本を読む事をお勧めする。無限を考えると神学寄り哲学寄りになって白けるよな。もっとも数学らしい数学は離散数学でR。アレフ1、アレフ2、アレフ3、アレフ∞の上にも高次元の∞ある(笑)
読了日:06月10日 著者:アミール・D. アクゼル
宿命の女 (徳間文庫)宿命の女 (徳間文庫)
「どんなに作者を憎んでいたとしても、その作品までも破壊する奴らは、暴徒としかいいようがない」ナチに協力した過度で戦後全作品を民衆に焼かれた、ジネット・マリスの幻の傑作「宿命の女」を探せ!美術雑誌副編集長と美術評論家は、オーストリアベトナムインドシナと世界を駆け回る。が費用をサラ金に借りた為トンデモないトラブルを誘い込む羽目に(゚o゚)!ヒトラー愛人時代のジネットそっくりの美女に惑わされつつ、最後の敵は海上自衛隊!?正紀の見事な美術ミステリである。
読了日:06月09日 著者:山田 正紀
第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)
ホモネタは孤児院の少年達が深夜一つのベッドの中でナンカやってるらしい事しか語られないが、通常性欲の描写も消え、静謐な物語になった。更なる続編書けるよね。第四部は新しい語り手が登場して、双子の夢の世界はマジに平行世界であったと明かされるSFになる事をキボンヌ。ハーモニカの調べと白いカーネーションの香りで平行世界を翔る少女の登場を妄想しました。
読了日:06月08日 著者:アゴタ・クリストフ
解ける問題 解けない問題解ける問題 解けない問題
解ける問題か解けない問題かを判断する問題は作れないと証明したチューリング博士の天才性が小学生にも理解出来る良書。本書ではテューリング表記だが、男子学生にチューして同性愛の罪で逮捕されたホモの前科があるチュー博士なので、チュー表記にして欲しかった。ほぼ全ページにイラストがある科学絵本なので、幼稚園児に与えて立派なホモの数学者に成長する事を期待すると面白いと思います。ワイルズ以後の本だが、100年のポアンカレ、400年のフェルマーと共に、2000年かかった円積問題のリンデマンも出す野崎先生のセンスは良いね
読了日:06月07日 著者:野崎 昭弘,eco
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
「あんたたちホモのカップルみたい。本のことなんかぺちゃくちゃとしゃべって」世界征服を企む悪のナチスドイツに包囲されたレニングラード守備隊の大佐は、金髪碧眼のモテモテ君(一週間セクスしないと頭がおかしくなる体質)と団子鼻のチビ君(当然童貞)に極秘任務を授ける。それはなんと卵け!腐臭漂う戦場に愉快なロードノベルの幕が上がる!童貞主人公の妄想モードといい、西洋版僕僕先生みたいな傑作。
読了日:06月06日 著者:デイヴィッド・ベニオフ
地球軍独立戦闘隊 (1982年) (集英社文庫)地球軍独立戦闘隊 (1982年) (集英社文庫)
醜いおっさんが指揮する世界征服を企む悪の組織の一員としてではなく、土人の美人の為にUFOに特攻する事になる零戦パイロットの青春戦記物語である表題作がベスト。他もミステリ、宇宙精神分析、植物知性、仏教ブラックホール切り裂きジャックとバラエティに富んだ短編集。
読了日:06月05日 著者:山田 正紀
ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)
文学→ノワール→本格推理?二部までは謎の提示編に過ぎなかったのか?『第三の嘘』でまたどんでん返しがあるんだろうな。デラ楽しみ。文学としてもホモとの絡みはあるので新しい。よくある変態性欲(今回は近親相姦が多い)は挿入まで描写するが、ホモとはキスシーンしかないのが不満だが、次巻はホモネタも爆裂すると期待する!
読了日:06月05日 著者:アゴタ クリストフ
新・世界の七不思議 (創元推理文庫)新・世界の七不思議 (創元推理文庫)
アトランティスストーンヘンジ、ピラミッド、ノアの方舟始皇帝兵馬俑坑、ナスカの地上絵、モアイの謎を西洋思考で見事に解決し、更に日本も結びつけてしまう力作。最終話で7作まとめてもう一度ひっくり返るのが、デラ楽しいO(≧∇≦)o。
読了日:06月03日 著者:鯨 統一郎
エリック・ホッファー自伝―構想された真実エリック・ホッファー自伝―構想された真実
哲学者というものは、アカデミズムに閉じこもって、語る必要のない無意味な事を考える馬鹿かと思っていたが、65才まで肉体労働者として暮らし、余暇として哲学者デビューしたこんな凄い人もいたんですね。哲学というと悪いイメージもあるので(えっ、俺だけ?)作者の名誉の為に言っておくなら、哲学者というよりは、箴言者か?難解な無意味な哲学用語はいっさい使わず、どう生きるべきかを教えてくれる本物の人生哲学の書。希望より勇気が大事というのはホント判り易くて感動します。絶望に勇気を持って立ち向かう人生が一番面白いよね!
読了日:06月02日 著者:エリック ホッファー
襲撃のメロディ (ハヤカワ文庫 JA 83)襲撃のメロディ (ハヤカワ文庫 JA 83)
ビッグコンピュータが人類を管理する未来社会で、コンピュータ襲撃を企む反体制主義者達のオムニバス。SFは新しい革新革命反体制寄りのイメージがあるが、価値の相対化を真摯に思索すれば、単純な、革命かっちょええ!で終わるわけにはいかない。実質一作目の本作で正紀はソウヤーやホーガンのアレの境地に達していたと理解出来る傑作。
読了日:06月01日 著者:山田 正紀

読書メーター