『こちら殺人課!』 E・D・ホック 風見潤 編訳 講談社

レオポルド警部の事件簿
CAPTAIN LEOPOLD AND THE GHOST KILLER

●サーカス

何の罪も無い純粋無垢ないたいけな子供の死体が発見された。

レオポルド達の捜査の結果、一人の容疑者が浮かびあがった。

状況証拠しかなかったが、そのたった一人の容疑者は、

世にもおぞましい変態ロリコン男だったのである!
レオポルドの同僚刑事と検事は、

「変態ロリコン男なら冤罪騒ぎになることはない。善良な市民は納得する」

と、犯人にする決心をし、逮捕し、拷問し、自白を強要した。

「物的証拠がないのに死刑にするつもりなのか?」

と詰問するレオポルドに対し、彼らはこう言った。

「こいつは世にもおぞましい変態ロリコン男なんだぞ!

 おじけづいて、精力のなくなった欲求不満者で、責任無能力者で、

 社会や女性と接触がなく、発育の遅れた低知能者なんだぞ!

 殺した方が善良なる市民の為なのだ!」

「それは違う!」

とレオパルドは叫ぶ。

「たとえ変態ロリコン男であっても、殺人犯として殺すのなら、

 その物的証拠がなければいけない。

 明日人殺しをする可能性があっても、
 
 今日の殺人事件の物的証拠がなければ、

 今日の殺人罪は適用してはならない。

 それが万人に平等な法によって守られた正義なのだ」

かくしてレオポルドは、

世にもおぞましい変態ロリコン男を無罪にする証拠を探し始めた。

無罪となる物的証拠が見つかっても、

誰もレオポルドをヒーローだなんて言わないのに!


●港の死

●フリーチ事件

●錆びた薔薇

●ヴェルマが消えた

何の罪も無い純粋無垢ないたいけな少女が消えてしまった。

遊園地の大観覧車に乗ったまま降りてこなかったのである!

魔女の呪いだという気持ち悪くて恥ずかしい声の中、

レオポルドは事件の真相を見事に暴く!

人間が空中で消えるわけがないのだ!


●殺人パレード

●幽霊殺人

何の罪も無い純粋無垢ないたいけな新妻が射殺された。

目撃者の証言は明確だった。

やがて警察の非常線に犯人はひっかかった。

だが、警察が犯人の車を発見した時、

犯人は既に車の中で死んでいたのである。

そして問題は、

犯人は犯行の30分前に死んでいたのである!

犯人は幽霊となって犯行に及んだのか?

幽霊なんているわけがないのだ!

レオポルドは見事に、

世にも気持ち悪くて恥ずかしい幽霊の正体を暴く!!


●不可能犯罪


現代ミステリ作家ベスト1はホックである!

などと言ったら殺されるかもしれないが、

この短編集や「コンピューター検察局」はいいですよ。

ミステリは論理的小説でなければいけない。

あきらかに超常現象が起こったとしか思えない状況を設定し、

そのトリックを見事にでっちあげるホックは素晴らしい。

超能力や幽霊なんてものは、見たって信じる必要はない。

レオポルドのように、そのトリックを暴く為に知的に論理的に考えるのだ!

こちら殺人課!―レオポルド警部の事件簿 (1981年) (講談社文庫)

こちら殺人課!―レオポルド警部の事件簿 (1981年) (講談社文庫)